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あっという間に期末テストがやってきた。
今までよりも勉強をしていた。なのに不思議と自信がなかった。
やればやるほど、自分がどれだけ丸覚えして解いていたかを気付いたからだ。
理解して解いてるんじゃない。知ってる答えを当てはめただけだ。
それをやめて、理解して解こうとすると今までよりできないような気がした。
勉強すればするほど、分かっていなかったことに気づく。
「唯斗、今回は余裕?」
「今までで1番やばいよ」
「勉強してたのに?」
「うん。分からないところだらけだって知った」
直樹がクスクスと笑う。僕は笑っている余裕はないけど、もう今から詰め込む気にもなれずにテストが始まるのを待った。
テスト期間も変わらず夜は走った。
これが適度に力を抜いてくれるようで、時間も忘れて気が済むまで走ると、今度は勉強の積み重ねと戦う気持ちになれた。
走って疲れてるはずなのに、こんなに疲れても走れるんだからまだやれる、と思う自分がいたのだ。とんだ体育会系精神だ。
そんな風にしながら、始めてきちんと勉強して迎えた期末テストは無事に完走した。
「燃え尽きた」
「お疲れ、甘いもんでも食っとけ」
テストを終えて、机にへばりつく僕に海くんは小袋のチョコレートをくれた。
「僕にくれるの?」
「おー、疲れた頭には糖分」
「あ、だったら帰りにアイスとか食べて帰ろう?」
僕は海くんと放課後に遊びに行ったことがない。誘わなかったわけじゃない。いつも断られるのだ。断られると分かっていても誘わずにはいられない。
「…………いーよ」
「だよね、また今度………え、いいの?」
「行かねーならいいけど」
「行く行く!ありがとう海くん、すごく嬉しい」
大袈裟、と言って海くんはうっすら笑った。
綺麗だなあ。
普段は結ばれた唇が少し開いて、口の端をあげて笑う。
笑う口元と同じように、悪いはずの目つきが優しくなった気がする。
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