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7月の海
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唯斗に勉強について聞かれた。勉強するようなやつだっけ?ってびっくりした。
息抜きに走りに行くなんて信じらんねーけど、あんだけ走るのが好きならありえるなと思った。
それからは本当に勉強をしてるみたいだった。
授業中、少し見た唯斗の姿。
まるで走ってる時のように真剣で、何を追いかけてるんだろうと思った。
うかうかしてたら、あっという間に抜かされる気がした。だって唯斗は余所見しない、誰がどこでどれほど悩んでも、唯斗だけは走り続けるから。
俺ももっと頑張らないとって、勝手に唯斗から気合をもらった。いつもより勉強したし、参考書も買い足した。
そうして迎えた期末テストの出来は良かった。
唯斗の結果は、残念ながら前回とそう変わらなかった。まだ追いつかれなかったことに安心して、全然じゃんって言ってしまったけど、怒ることもなくそうなんだって笑った。
海くんに追いつきたいなあ
そう言って笑った。
唯斗が追いかけてたのは俺か。
俺を追いかけて、あんなにまっすぐ前を向いてたのか。
嬉しかった、誇らしかった。
そして、まだ負けられないと思った。
唯斗に追い付かれたくない。
まだまだ走っていてほしい。
その顔を、その真剣に何か追いかける顔を、俺だけにもっと見せろ。
その顔は、俺のものだ。
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