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「うわ、まじで唯斗?似合う……じゃなくて、客連れてきた」
なぜ昨日のミニスカポリスではなく、執事服のようなものを着ているのか、そんなことを聞く余裕もなくなった。
あの子がいた。僕が1番会いたくない女の子、その子がいた。
「帰って」
「今、着たばっかりだよ」
「さっき廊下で藤城唯斗くんのクラス知らない?って聞かれたから連れてきたんだけど……だめだった?」
「ううん、佐山くんは悪くないよ。ごめんね。でも、君は帰って」
思ったより大きな声が出てしまって、直樹が出てきた。出てきてあの子を見た瞬間、直樹が怒ってくれていることがわかった。
「お前なにしに来たの?まだ唯斗になんかしたいわけ?」
「ちがっ、謝りたくて」
「謝ったから好きです付き合ってくださいってか?ふざけんなよお前」
「それでも好きなんだもん」
「だからお前のしたことが間違ってねえってか?まじでふざけんな」
「直樹、目立ってる。でも、怒ってくれてありがとう」
なんでこうなったんだろう。謝らせずに居たからこうなったんだろうか。この子の性格的に、たぶん謝らせても同じ結果だったと思う。
この子が望む返事を僕がするまでは変わらない。何をされても、僕の周りがどう変わっても、僕はこの子の望む返事はできない。
流石にこんなところで話すわけにも行かないと思って直樹を見る。その後ろに海くんが見えた。直樹が怒る姿なんて僕でもそう滅多に見ないし、気になったのかもしれない。なにがあった?と不安そうな、心配そうな顔をしていた。
すぐにでもそばに行きたかったけど、今はそうも行かなさそうだ。
「直樹、少し離れてもいい?」
「いい加減、唯斗もキレていいと思う」
「ありがとう。離れて話そう」
幼馴染と、大切な人に背を向けて、好きになれない子と歩き出した。
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