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彼女と人気の少ない展示室にやってきた。本当のことを言うと話したくなんてないんだけど、僕のクラスの雰囲気が重たくなるのも嫌だった。
「唯斗くん、ごめんなさい………。私、ただ唯斗くんが好きで」
「好きで、君は何をしたの」
「付き合ってくれたらもうしなくていいよってみんなに言うつもりだった!」
「でも僕は付き合わなかったから卒業まで続けたの」
「そうするしかなかったの!やっちゃったんだもん、好きなの、唯斗くんと付き合いたかったの」
「そう」
「本当に反省してて、だから謝って、私を見てもらおうって」
本当に嫌になる。
好きと言う感情の先に、この冷たく、荒々しく、痛い感情があるのか。そうなっても、その気持ちを言葉にすると好きと言う言葉になるのか。
それはどこで、どんなタイミングで変わるだろう。
暖かくて、穏やかで、優しいだけだと思っていた。だけど、好きと言う感情はそれだけではないらしい。
「1度しか言わないから、ちゃんと聞いて欲しいんだ」
「う、うん」
「僕は君のことだけは好きにならない」
こんな言葉は、言いたくない、使いたくない。
出来るならそのまま関わらずに他人として過ごしていて欲しかった。
「僕は君に興味がない。謝らなくてもいい。謝ってもいい。怒鳴りたいなら怒鳴ればいいし、叩きたければ叩けばいい。今は好きにしてくれて構わないから、もう話しかけたりしないで欲しい」
彼女は泣き崩れる。だけど、僕が慰める必要なんてない。
「本当に好きだったの、最初はそれだけだったの」
「でも唯斗くんは、誰のことも見ない。あの状況を作ったら、私のこと見てくれるって。私に頼るしかないって、思ってた」
「止まらなかったの、止められなかった。やり始めたら、唯斗くんが見てくれるまでやめられなくなった」
始まりは僕を好きだと思ってくれたことだ。
それがどこからか歯車が狂って、暖かくて穏やかで優しい気持ちから、
冷たくて荒々しくて痛い気持ちになった。
ぶつけられた僕だって痛かった。
そんな好きを抱えた彼女も苦しかったんだと今知った。
抱えた彼女の方が今は苦しそうだった。
でも僕は、許す気にはなれなかった。
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