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9月の海、2
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一体なにがあったのか気になった。
だけど聞いてもいいんだろうか。あいつは嘘をつかない。言わないってことは言いたくないってことだと思う。なら聞かないほうがいいんじゃないかと思ったりもした。
気になるけど、土足で踏み込んでいいとも思えなかった。
唯斗の気持ちに何も答えてねーのに、そんなとこだけ踏み込むなんてしちゃいけない。
唯斗は昼も食べずにホールにいたから、適当に食べ物を買っておいた。多分足りないけどないよりマシかと。
遠くから後夜祭を眺め、唯斗は昼の女の子のことを話してくれた。
正直、驚いた。
それはイジメの一種だと思う。ってか、無視が1番辛いと俺は思う。居るのに居ない、みたいなそんな扱いだから。それをこの唯斗がされていた?しかも、そんなくっだらない理由で。
ああ、だからか。だからこいつは体育祭で怒ったのか。
好きだから、って理由で俺に何かを押し付けたくなかったのか。
そんな好きを向けられても、こいつの中の好きは濁らないんだな。
痛みを堪えたように伝えたのは、俺が痛くないか心配だったから、か。
気づいたら痛くないと言ってた。
唯斗の好きは痛くない。
唯斗が俺にくれる好きは、穏やかで静かで、優しい。
その好きを言われるたびに、信じられないと思ってた気持ちも、興味を持つなと蓋をした気持ちもどこかに消えていく。
あまりにも真っ直ぐ向けられる好きは、何もかも飛び越えて俺の中に入ってくるようになった。
海くん、好きだよ。大好き。
知ってる。
唯斗が俺を好きなのは知ってる。
唯斗の好きは、信じてる。
俺は唯斗をもっと知りたい。
好きの先の関係で、唯斗はどんな風に、笑うのか。どんな風に、好きというか。
そのために、俺は自分の気持ちを受け入れなきゃいけない。
唯斗のこの 真っ直ぐな気持ちを前に、自分の気持ちに蓋をしたまま向き合うのは、きっとしちゃいけない。
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