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聞き耳
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「せんせーい!来ちゃった!」
「...?」
大きなドアの開く音と声に目が覚めた。
「また岩瀬くんかあ...部活はないの?」
シー、と言いながら小声で話す岬。
岩瀬...?
聞いたことの無い声だ。
俺はベッドからそっと出て、聞き耳をたてる。
「部活はしてないよ!なんで静かにしろなの?」
「隣で一人寝てるからだよ」
「ふーん...」
「分かったら出ていきなよ」
相変わらず結構言うなぁ。
「えーいやだ!僕、もっと岬先生のこと知りたいもん」
「知りたいって…なんでかな」
「好きだから!」
す、好き!?岩瀬ってやつが、岬のことを?!
「分かった分かった。もう、隣の奴起きちゃったから、今日のところは帰ってくれないかな」
えっ!?なっ、なんでバレたんだ!?
俺はなんも音立ててないのに!
「えー...ほんとなのー?」
ヤバいっ、こっち来るっ!
と思った瞬間、カーテンを開けた長身の男と目が合った。
俺は布団に入ろうとして、カッチンコチンに固まった。
「わ、ほんとだ」
「んだよっ、閉めろ!」
ジャッ
反射的にカーテンを閉めてしまう。
聞き耳をたてていたことが気まずいのもあった。
ベットにまた潜り込んで、何も見なかったフリをする。
「だから言ったでしょー、起きたって。...今日は帰ってくれないかな」
「......はいはい。また明日ね、岬先生」
...行った...か?
岬のことが好きだなんて変わり者だ。
岩瀬って言ったか。
...結局どんなやつだったか...、顔をよく見とけば良かった。
「で、冬夜」
「ひっ」
近くで急に声が聞こえて、身体が強ばる。
「こっそり聞いているなんて、趣味悪いねえ」
そーっと布団の外を覗くと、腕組みをして微笑む岬が立っていた。
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