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遠足2
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「起きて、冬夜」
岬に軽く揺すられて目が覚める。
「....ん、...はよ」
目を擦りながら呟くと、ピク、と岬の動きが止まる。
「?...そういえば、岬は遠足来んの?」
「遠足?ああー、うん。川だし、何かあっても困るからね」
確かにそうだ。
起き上がってスリッパを履き、乱れた制服を軽く整える。
欠伸を噛み殺しながら隣に移動し、バッグを背負う。
「ちょっと待ってね…これ打ち込んじゃうから」
岬は真剣な顔をしてパソコンに向かっている。
「何してんの」
「保健だよりの作成〜」
だらららとすごい速さでキーを打つ岬の横顔を、俺はじっと見つめた。
....心做しか岬の顔色は良くなくて、だからベッド使ってたのか…、と気づいた。
椅子を岬の隣に寄せ、座って顔を覗き込む。
「んー?どうしたの」
チラ、と岬が俺を見た。
「...、早く終わらせろよ」
体調悪いのか、とか、顔色悪いぞ、とはなんか言えなかった。
「うん、待っててね」
目を細めて作業に戻った岬を、俺はずっと見ていた。
助手席に座ると、岬がはい、とくまさんを渡してくれた。
「.....」
ふわふわとした触り心地を楽しみながら、窓に目を向ける。
顔を埋めてそっと息を吸い込むとほのかにいい匂いがして、居心地の良さを感じる。
「っ、ふふっ」
「!?」
岬が運転をしたまま軽く笑う。
「冬夜って、もしかして匂い嗅ぐの好きなの?」
いろんなものをスンスン嗅いでるよね、と楽しそうに言う岬に、顔が熱くなる。
「っ、うるさい...いいんだよ!」
、危な...。
岬の匂いを嗅いでいることはバレてないようだった。
「よし、着いたよ」
「...さんきゅ、」
くまさんを座席に置いて、ドアを開ける。
「....、」
「どうしたの?」
ドアを開けたまま固まっている俺に、岬が不思議そうに声をかけてくる。
「っ、ちゃ、ちゃんと寝ろよ!」
...、ぶわぶわと顔が赤くなっていくのを感じながら、岬に吐き捨てるように言って、バンッと勢いよくドアを閉めた。
...岬がいなくなったら仮眠取れないからな!
そうだ、俺の快適な仮眠のためだ。
────♪
携帯が震えて、メッセージ受信を知らせる。
「っ!」
『ありがと。冬夜が俺の匂いをこっそり嗅いでいたことは、見なかったことにしてあげるよ』
ばっ、バレてたっ!
「っ、こいつ...っ」
俺は走り去って行く車を、見えなくなるまで睨みつけるのだった。
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