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「あ、花壇に水やりしないと。」
食器を片付け終えて思い出した。体格の良い見た目にそぐわず花の好きなキミの花壇に水をやるように頼まれたのを。時々記憶から抜け落ちることもあったがそれでもこの1ヶ月ものぐさな僕が水やりを欠かしたことはない。今日も思い出せて良かったと外にある花壇に向かう。
「今日はちょっと早いけど水だぞー」
葉っぱに付いた滴が起きた時より昇っている日の光に照らされてキラキラ輝いているのを見るとキミが花を好きなのが少しだけわかったような気がした。
「さて、暇潰しに掃除でもしますかね」
家に戻って掃除を始める。と言っても今はひとりなので大して汚れてはいないため一通りやることをやってしまえばすぐにおわってしまった。
「暇潰しにもならないじゃないか」
本当にやることがなくなってしまったので仕方なく読書に勤しむことにした。部屋で読む気にはなれなくていくつか本を持ち出してリビングのソファーへなだれ込んだ。
「こんにちは、居ないのかい?」
ペラペラとページを捲っていたらいつの間にか寝てしまっていたらしく玄関をノックする音で目が覚めた。やっぱり早起きすぎたなと思いながら玄関に向かう。
「はーい、どちら様で……」
「こんにちは」
「あれおばさん、おじさんもどうしたの?」
村に住む仲のいい老夫婦だった。わざわざ村はずれの家にどうしたのかと首を傾げる。
「あのね、ちょっと前に家にこれが届いたの」
そう言って見せたのは木箱だった。これがどうかしたのだろうか。
「確認したらあなたのだったから、帰してあげた方がいいと思って……」
話すおばさんは何故か泣き出してしまいそうだった。
「私たちはとりあえず帰るけどあまり落ち込まないでね」
「何かあったら……いや、何もなくても落ち着いたら家に顔を見せにおいで」
そう言って木箱を手渡すと二人は帰っていてしまった。どうしてあんなに暗い雰囲気だったのか、せっかく来てくれたんだからお茶くらい出したのにと思いながら扉を閉めた。
「でもこれ何だろう?」
手渡された木箱はきちんとした重さがあるので中に何かが入っているのは確かだろう。試しに軽く振ってみるとカラカラと陶器に何かが当たるような音がした。机に箱を置いて蓋を開けた。
「壺?」
箱の大きさ丁度くらいの壺が入っていた。壺の中にも何かあるのかと中を覗く。そこには小石程の大きさのものからもう少し大きいものまで、色々な形をした白い石のようなものが壺の底が埋まる程入っていた。他にも何かあるのかと探ってみると箱と壺の隙間に手紙が挟まっていた。
「なんだ、キミの名前じゃないか」
そこで思い出した。あの白い石は以前キミが見せてくれた花壇にまく肥料に似ているし、壺だって前にキミが「部屋にも沢山花を飾りたいな」と言っていたんだ。きっとどっちもキミが買って配達を頼んだものが村はずれにある僕らの家がわからなくておばさんたちの家に届けられたんだ。
「それにしても、花を飾るにしてはこの壺はちょっと地味というか暗いんじゃないかなぁ」
こういうとこにセンスがないのがキミらしいと頬が緩んだ。手紙もキミ宛なら僕が見るのは申し訳ないので壺一緒に箱に戻して蓋を閉じる。
「キミが早く帰ってこないとこの肥料もダメになっちゃうよ」
キミの部屋に木箱を片付けて僕はソファーに戻りもう少し寝ようと目を閉じた。
今日も遠くで続いてるだろう隣国との争いが何事もなく終わりますようにと願いながら。
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