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タピオカとおしゃべり 4
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並び出してから1時間半くらい。
ようやくあと少しというところまで来た。
「春翔は何頼む?」
「んー…これにしようかな」
お店のお姉さんに渡されたメニュー表を見ながら少し悩む。
タピオカってこんなに種類沢山あるんだ。
あり過ぎてどれがいいのか分からない僕は結局
オススメって書いてあるミルクティーに決めた。
「ん〜!美味しい!!」
「本当だ、美味しい…っ」
レジで注文してドリンクを受け取って。
並んで歩きながら太めのストローで粒を吸い込む。
喉を通る水分と柔らかいながら噛みごたえあるタピオカ。
噛めば噛むほど黒糖の甘みが口の中に溢れて広がる。
「すごい…すごいねっ、モチモチしてる!」
「モチモチっ!」
僕の横で同じように感動して目を輝かせている夕陽くん。
タピオカ増量すれば良かった、と少し悔しがってた。
そんな様子がなんだか可愛くて小さく笑う。
奏多達も連れてまた行こうね、なんて僕から言うと嬉しそうな笑顔が帰ってきた。
そこからあとは特に何を言うでもなくいつもの場所へと足が向く。
2人で並んでゆっくりゆっくりと進める足。
傾いてきた太陽が僕らの影をうんと伸ばす。
飲みながら特に内容のない話をして。
ゆっくりゆっくり、神社までの時間を惜しむように歩く。
「ねぇ、寄り道しない?」
神社へ向かう道中。
突如立ち止まって行きたいところがあると言う夕陽くん。
僕を手招き、いつもは右に曲がる路地を左へと折れた。
坂を下り、坂を上り、道を曲がり、階段をのぼる。
普段真っ直ぐに神社へと向かっていた僕には初めて見る景色の数々。
そう遠くへは行ってないはずなのに、まるで初めての街に訪れたみたいだ。
「とうちゃーく!」
「わぁ、キレイ……ここは?」
「俺の秘密の隠れ家」
ひたすら後ろをついて歩き辿り着いた場所。
それは展望台のように街を一望できる小さな高台だった。
言われるがまま眼下を見下ろせば夕焼けでキラキラと輝く街が目の前に広がっていた。
神社からも毎日のように見下ろしている街の景色。
だけれど、角度が違うことで普段は見えない川の水面に反射する光がより一層風景を輝かせている。
「俺のお気に入りの場所なんだ、ここ」
「へぇ…いい所」
「でしょ。夕焼けが1番綺麗だから見せたかったんだ」
もちろん神社からの景色も好きだけどね。
そう言って笑う君の方がキラキラしてて綺麗だよ。
…なんて言えるわけもなく返せたのは相槌だけ。
二人で静かに顔を見合わせて「帰ろっか」と口を揃えた。
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