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家族 2
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昔から父は厳しい人だった。
それでも生きる上で大事なことやマナー、人として当たり前の事に煩かっただけ。
どこにでも居る、ちょっと口煩いだけの人。
『春樹と違ってお前はダメなやつだな』
そして、よく出来る兄と僕を比べたがる人だった。
なんでも出来る僕の6つ上の兄ちゃん。
明るくて友達も多くて、勉強もできて、運動もできて。
常に人の輪の中心にいたカッコイイ兄ちゃんだった。
そんな彼と違って昔から何も出来ない自分。
自己表現は苦手だし友達もいないし、勉強も運動も苦手。
特になんの取り柄もない。
常に兄の陰に隠れて生きてきた。
父さんは特に兄ちゃんを可愛がってるという事を、
子供ながら薄々気づいていた。
ああ、自分ではダメなんだ。と。
母さんも、父さんに怯えて影でしか僕を可愛がってはくれなかった。
「春翔はそのままでいいんだよ、兄ちゃんが守ってやるから」
けれど兄ちゃんだけは違った。
みんなに出来損ないと言われても、
いつも僕を褒めてくれてそばにいてくれた。
僕の友達に、と昔猫を拾ってきたのも兄ちゃんだった。
結局父によって猫は追い出されてどこかへ行ってしまったけれど、兄ちゃんはすごくかっこよくて、僕の憧れの人。
僕も兄ちゃんみたいになりたい。
あの頃はそう思ってた。
だから頑張って友達作って、勉強も頑張った。
自分の意思も、少しずつ人に伝える努力をした。
努力さえしてれば父さんも文句は言ってこなくなった。
今思えば、きっと兄ちゃんが庇ってくれてたんだろう。
それでも全ては丸く収まってて、順調だった。
……あの日までは。
あの日……
僕のせいで兄ちゃんが家に帰ってこなくなるまでは。
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