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プロローグ-俺が笑わない訳-
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中3の冬_____
あの日俺は、忘れ物を取りに放課後に自身の教室へ向かった。
日が暮れてオレンジの光が差す教室でお前は数人の友達と笑い合ってて。
俺はただ、何の話をしてるのか気になって声をかけて教室に入ろうとした。
「コウ……「なぁ、秦ってさー……ぶっちゃけ古谷のことどう思ってんのー?」
「ッ!?」
あまりの質問に咄嗟にドアの後ろに身を隠してこっそりと中の様子を伺う。
すっげードキドキする。
正直言って俺は康介が好きだし。
別に自慢じゃないけど康介が下の名前を呼ぶことを許可してるのは俺だけだってのも知ってる。
両思いだったらいいななんて何度も思ったりした。
でも中々気持ちを伝える機会がなくて。
だから凄い答えが気になる。
ドクリと脈打つ心臓の音が全身に伝わっているように感じて息を呑む。
これでもし両思いだったらちゃんと改めて気持ちを伝えよう。そう思っていた。
でも、お前の返事は俺の思ったものとは違ったんだ。
「は、古谷?ないない、ないから。あいつキモいし笑った顔とか見るに耐えないから。今回も手作りクッキーとかよーマジキモいんだけど」
心臓が止まるかと思った。
頭が真っ白になって目の前は暗くなって。
酷い目眩がした。
笑いながら友達の前でそう言ったお前は、俺の作ったクッキーをゴミ箱に捨てたんだよな。
確かにそうだ。
男が手作りクッキーなんて我ながらキモい。
笑っちゃうよな。本当笑えてくる。
笑えてくるのに、なんで涙なんか出るんだよ・・・・・・。
生憎、アイツは俺が聞いてることに気づいてないみたいだから。
俺は静かにその場を立ち去った。
結局寮に帰っても、康介の言葉が頭から離れなくてなかなか寝れなくて。
別に男同士の恋愛が普通だと思ってたわけじゃないし振られて当たり前だと思う。
でも、エスカレーター式の全寮制の男子校だから男同士の恋愛は身近にあって。
だから、俺達もってそう考えてた。
実際あんな言葉を聞いたあとでも康介を嫌いになれない自分がいる。
この気持ちは康介には迷惑なだけなのに。
もう、ここにはいられない。
俺はそっと携帯を手にすると一通のメールを送信する。
康介の優しさを好意だと勘違いした俺が馬鹿だったんだって、自虐的な笑みを浮かべてその日は目を閉じた。
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