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当初の目的とわ
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教室に入るとゆっくりと教卓の隣に行き先生の指示を待つ。
「こいつが今日からクラスメイトになる古谷だ。 おい、自己紹介しろ」
先生にしては、なんとも言葉遣いが荒いがこんな高校だこんな先生が何人いようが不思議ではない。
まぁ、一人にして欲しいが。
俺は、黒板に静かに名前を書くと後列に聞こえるか聞こえないかぐらいの声で自己紹介した。
「古谷……優です。 よろしくお願いします。」
目がほとんど前髪で隠れているためまだましなのだがそれでも周りの視線がこちらに向いているのをひしひしと感じる。
小さな声でヒソヒソと聞こえるのは顔が分からないだとか髪染めてるだとか、まぁ普通の反応だ。
お願いだから俺に興味は持たないでくれ。
簡単な自己紹介をすませて黙り込んでいると担任の新崎が俺に尋ねる。
自己紹介はそれで終わりか? と。
「これ以上言うことないです。」
その問いかけに下を向いたまま答えると少しむっとしたような声で「だったら、あそこの席に座れ」と前の席から参列目の窓側を指さされた。
どうやらこの先生は俺が眼を合わせなかったことに不服らしい。
でもずっと黙り込んでいる俺を見て諦めたようにため息を着いた。
俺は指示された通りに一番窓際の席に座ると今までどうり下を向く。
席に座ると新崎先生は、今日のスケジュールを言って教室を出て行った。
そういえば、俺が自己紹介をしたあとからは皆俺ではなく新崎先生を見ていたなと思い出す。
俺にそれほど興味がないということだろうが、そうゆうのじゃなくて……何かこう、熱い視線だった。
まるで恋してるような……。
さすが叔父さん自らホモだらけと説明するだけはあるなと改めて思った。
でも、もう……恋愛は懲り懲りだ。
まぁ、なんにせよ俺に興味を持たれなかったのは好都合……このまま普通に過ごして康介のことを忘れれ……
「ふーるーやぁー君! 古谷君ってば!!」
「っわ……!?」
いきなりの呼びかけに顔を上げると目の前にはメッシュを入れた何とも馬鹿そうな男がこちらを笑って見ていた。
「やぁ~っと顔あげたねぇー。 古谷くん、何回呼んでも下向いてるんだもん。」
ヘラヘラと笑いながらそう言った男は俺の顔を覗き込むようにして顔を近づけてくる。
俺は、下を向きなおすと小さく謝った。
「ごめん……」
俺が謝ると相手は覗き込むのをやめて髪の毛を触ってきた。
「ねぇ、古谷くん。 この髪って地毛だよね? 皆染めたとか色々言ってたけどさ染めてたらこんな髪綺麗じゃないよねー! 前髪長すぎて顔見えないのは残念だけど」
髪をひとふさ掴んでは離してを繰り返しながら話す。
確かにこの髪の毛は地毛だ。
周りから似合わないとずっと言われてたから何度も黒に染めようかと思ったけど『この色お前に似合ってるし俺は好きだから染めるな』って康介に止められてたっけな。
でも正直言って俺自身似合ってないと思う。
俺の髪は普通の金色よりも薄くて白っぽい、日本人顔の俺には合わないし気持ち悪い。
いっそのこと康介と離れたし染めようかななんて考えが頭をよぎった。
「でもさー、この色さ凄い綺麗だよねー。さっきちらっと顔見えたけどさ、古谷君すっごい似合ってると思うなー。俺は好きー。」
「え……」
意外な言葉にまたも顔を上げてしまう。
俺にこの髪が似合ってると言ってくれたのは、両親と康介だけだったから。
「でも、この色……俺に似合わないっていろんな奴から言われてきたし」
「んー、それってさ嫉妬とか僻みって言うのじゃない?」
「そんなわけ……ない」
俺の髪に触りながら受け答えする。いい加減触るのはやめてくれないだろうか。
周りの視線が痛い。
「そうかなぁ。 ってかさ、古谷君ずっと下向いてるよね? 前髪とか上げたらー可愛のにもったいないし」
そう言うとそいつは俺の前髪をあげようとした。
「ッ、やめろ」
俺は静かに手を振り払うと自分の顔を手で押さえる。
こんな顔晒したってまたキモいって言われるだけだ。
また康介に……ってここに康介はいないのに一人気にして本当馬鹿みたい。
「あ、ごめん嫌だった? もったいないと思うけど……そうだよねー見せたくない人もいるよね。 古谷くんに嫌われるのやだし無理強いはしないよー」
振り払われた手をびっくりしたように見たあとすぐにへらりと笑って彼奴はそう言った。
「あ、そうだ。そういえばまだ俺自己紹介してなかったよね。俺は、宮芝啓太っての啓太ってよんでよ!」
自己紹介をした後、握手を求めるように手を差し出してくる。
「あ……俺は……」
「言わなくてもだいじょーぶ、古谷優でしょ? 優って呼ぶねー」
そう言ってさらにずいっと手を差し出す。
優……そういえば康介も俺のこと優って呼んでたなぁ……。
俺の周りに俺を呼び捨てにする奴はいなくて康介だけが優って呼んでたっけ。
それで、俺だけが康介のことを呼び捨てにできて……。
「っ……優は、やめてほしい……」
胸がズキリと痛む。
そんなこと気にしてるのもう俺だけかもしれないのに。
康介はとっくに俺のことなんか忘れてて、いなくなって清々してるかもしれないのに。
本当、未練深いよな。
でも、それでもやっぱり胸が痛いんだよ……。
「優って呼んじゃだめか……。 じゃあ……優ちゃん! 優ちゃんでいい?」
宮芝は、少し傷ついた顔をしたあと開き直るように笑ってそう言った。
「ちゃんって……まぁいいけど」
俺が答えるとパアッと顔を明るくさせて手を握ってきた。
「じゃあ、優ちゃんは俺のこと啓ちゃんって呼んで! んで、優ちゃんが優呼びを許してくれたら俺のことも啓太って呼んでよ?」
そう言った啓ちゃんの言葉に少し苦笑いしつつ俺も手を握り返す。
「これからよろしくね! ゆーちゃん」
「……ん、よろしくけーちゃん」
当初の誰にもかかわらずってのはダメだったけど、これで晴れて俺たちは友達?になったみたいだ。
(ね、ゆーちゃん。 俺ゆーちゃんの事好きになったかも)
(好きに? 俺も嫌いじゃないぞ、友達としてよろしくな)
(……わかってないなこの子)
(ん? 何か言った?)
(別に~)
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