アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
突然の出会い#2
-
午後の部はゲストライブで幕を開ける。
そのあとは佐々木も帰るって言ってるし
僕は保健室にひきこもる予定。
僕が居ると言えば氏原先生もいてくれるから
なんてわがままな理由で。
『まもなく、午後の部が開始いたします』
きゃーきゃーとはしゃぐ女子
それから、裏口を張ってて先生に捕まる男子
ゲストがいる文化祭なんて初めてだから
これが従来通りなのか異常なのかはわからない。
でもひとつ言えるのは、Rickyってそんなに有名人だったんだなあってこと。
『今年はゲストにシンガーソングライターのRickyさんがきてくださいました!』
体育館中に叫び声が広がる。
キンと頭に響く音に思わず耳を塞いだ。
『なお、ご本人の希望により幕を閉めた状態での公演となります』
えぇ~~っ
ついで響くさっきよりも少し低い声。
この中の一体何人がサクラなんだろうか、と
人間不信に陥ってしまいそうなほど謎に全校が団結してる。
宗教団体みたいで鳥肌立ちそう。
『それではRickyさん、お願いします!!』
その瞬間、体育館の照明がすべて消えた。
遮光カーテンで太陽の光をも遮られ、館内は真っ暗闇
紫色の重い幕が上がると
白く張り替えられた内幕
バンッ
とスポットライトが中心に当てられると
そこに影が浮かび上がる。
長身の、細身で、少し長めの髪をきちんとセットしていて
スタンドマイクに引き寄せられるのは
細くて長い指―――。
―――小さな女の子が口ずさんでいるような鼻歌から始まる曲だった。
それだけで、この曲を知ってる人たちはピンときて騒いでいたみたいだけど
僕にはそんな雑音一切聞こえなかった。
女の子が重い扉を押すギイィィという音が止むと
突如激しいバンドサウンドに変わる。
Rickyの影が揺れる
マイク越しの
ス――っと息を吸う乾いた音
ぶわっと風が吹き抜けた
細い体からは想像もできない迫力のある声に
全身が震えた
歌詞なんて、まともに聞きとれていない
曲なんて、次の曲が始まる頃には頭から抜けている
なのにいちいち心臓に突き刺さる
繊細な音、複雑なリズム、響き渡る声…
音楽を聴いて
誰かの歌声を聴いて
涙を流したのは初めてだった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
4 / 95