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突然の出会い#9
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結局あの後、氏原先生が来る前に慌てて保健室を出た。
もしかしてら見られていたかもしれないし、
気付かれていないかもしれない。
だけどもしそうだとしても、あの人は勘が鋭いし僕の考えをいとも簡単に当ててしまったりするから
どれだけシラを切ってもバレるのは時間の問題…。
今頃心配してくれているかもしれないけど、
今日の僕は『心配かけてごめんなさい』を
氏原先生に面と向かって言う余裕はない。
仕方なくスマホを取り出して、
氏原先生にメッセージを送る。
案の定すぐに既読がついて、いつものかわいい顔文字のついた返信が来た。
『よかった。暗くなってきたから気をつけて帰ってね(^^)‼︎
また学校で会おうね!』
キャラクターのスタンプを一つ押して、
先生とのトーク画面を閉じる。
空を見ると鮮やかなオレンジ色は少しずつ紫色を帯びて、
あたりは学校を出た時よりも心なしか暗くなっていた。
自宅まで、そんなに距離があるわけではなくて。
だけどなんだか今日はすごく遠く感じた。
いつもなら家に帰るのなんて好きじゃなくて、どうしてこんなに近いんだろうってモヤモヤしながら公園に立ち寄ったりしていたんだ。
でも今日はそんな気分じゃない。
というか、それどころじゃない。
彼からしたらただの火遊びかもしれない。
だってそうだろう、僕みたいな人間をあのRickyが相手するなんてそれ以外に理由が考えられないもん。
だから走るんだ。
ほんの少しの興味がこれ以上薄れてしまったら
僕の存在は彼の中で無になってしまう気がするから。
息を溢すあの笑みを、また見られるだなんて到底思わないけど、それでも。
誰もいない家の、冷たい階段を駆け上がる。
自分の部屋に一目散に飛び込んで、何となく苦手で今まで布を掛けていた姿見を部屋の奥から引きずり出した。
ボタンがはちきれんばかりの勢いで制服を脱ぎ捨てると、
再度メッセージアプリを開く。
さっきのスタンプに氏原先生からの返事は無くて、
いつもならちょっと落ち込んで、僕の返信のつまらなさに嫌気さして無いかなあとかしょうもない事を考えたりするけど今は違くて。
震える手で普段は使わないページを開く。
慣れないせいで間違ってID検索しちゃって年齢制限に引っかかる。
こんな鈍臭いことしてる間に彼の気持ちは風に吹かれた花弁のように何処かへ飛んでいってしまうかもしれないのに。
一文字、一文字間違えないように数字を打ち込んでいく。
最後の文字を打って検索した。
『 s 』
「え、ぁ…これ……?」
出てきた一つのアカウント。
考えてみればこんなの偽物かもしれないし適当に並べた数字かもしれない。
そもそもRickyのりの字も入ってないし画像もよくわかんない紫色の薔薇が一輪だけだ。
ここまできて不安しかないなんてやっぱり僕は僕だ。
使えないメンタルだ、本当に。
追加を躊躇う僕の指は今もなお震え続ける。
親指のすぐ下。
これに触れたら全てがわかる。
僕の人生を変えるボタン。
僕が変わるかもしれないボタン。
僕が触れなきゃ、変わる事のない
画面、日常、人生。
「う、うぅぅ……んん、くっ………!!!?あっ。」
自力で触れるより先に、震えた指先が勝手に触れてしまった。
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