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もう離れられなくて#2
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実はあの日以来、奏楽さんとは1度も会っていない。
もちろん僕には学校があるし、奏楽さんも流石は有名歌手と言ったところで
中々予定を合わせる事が出来ないのが現実だった。
いくら油性マジックでも、1ヵ月も経てばさすがに大きく書かれた“俺の”の文字は消えてしまうわけで
首元の痛々しかった噛み痕も、もう気にして見なければわからない程薄れてしまった。
不意に、不安に駆られる時がある。
あれは夢だったんじゃないかって。
そして今も、長い夢を見ているんじゃないかって。
連絡を取っているのは
電話をしているのは
僕の恋人は
一体誰なんだろうって。
本当に存在しているのかって。
もちろん空き時間に連絡はくれるけど、
真面目に学校に行っている日には、僕の返信が遅くなるし
真面目に作業に取り組んでいる時は、奏楽さんの返信が遅くなる。
初めての恋人
初めての芸能人
格好良くて色っぽい、僕なんかには勿体無い大人の男性。
初めて尽くしの僕には、何が普通で何が正しいのかがわからない。
会えたらそりゃ嬉しいんだろうけど、
非日常的すぎてお腹がいっぱいなのが現状だ。
付き合って1ヶ月
たったの一度しか会ったことがないなんて、きっと普通ならば大丈夫かと心配されるのかもしれないけれど。
不慣れな僕にはそのくらいが丁度いい。
何となく胸の奥がチクリと痛む時には、
そう思い込んでおくことで自分の心を誤魔化した。
それに…
『おはよ。明日午後から空けておけ。
今日はもう寝るよ。悪いな』
そんなメッセージが届いていたのは今朝の事。
今朝と言っても、相変わらず奏楽さんは夜通し起きているから吹き出しの横には4時2分と記されていた。
これが現実だったなら、文化祭以来の奏楽さんということになる。
勿論限りなく友達の少ない僕が、
土曜日に予定なんて入っているはずもない。
もはや平日でも余裕で学校なんてサボってしまう勢いだ。
氏原先生に怒られそうだけど。
そわそわ、何度もスマホを見てしまう。
僕が起きた時、奏楽さんは寝てしまっていたようで
まだ既読はついていない。
“もちろんです!
お疲れ様です。ゆっくり休んでくださいね”
何十回と誤字、脱字はないか
おかしくないかと自分の送った返信を確認する。
もう少し可愛げがあった方が奏楽さんは喜ぶだろうか。
新しくスタンプでも買ってみようかな。
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