アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
もう離れられなくて#3
-
明日、奏楽さんに会える。
そう思えば何もかもがいつもと違って見えた。
少し乾いた風に押し流される雲も、
廊下から響く賑やかな話し声も。
授業を進める教師の声ですら、
なんだか新鮮で心地良いから不思議なものだ。
奏楽さんを傍で感じる事が出来る期待、嬉しさ、気恥ずかしさ。
そして緊張感。
改めて僕を見て、僕を知って、
こんなやつだったのかと幻滅されないように
呆れられてしまわないように。
学校も頑張れない、こんなダメダメな僕を知られたくない。
今は見栄かも知れないけれど、本当の僕を知ってもらえる事があるならば、その時のために立派な自分になっていたい。
…少なくとも、今よりは
僅かでも。
勉強が得意ってわけではないけど
板書に追いついて、
居眠りする事なく授業を受けることはできる。
問題児だ問題児だって1つ下のクラスを受け持っている口の悪い教師からはからかわれたりもするけど
別に僕だってやる気になれば
真面目じゃないわけじゃないんだ。
これくらい、出来る。
奏楽さんと付き合っている人間として
これくらい出来て当然。
時間の許す限り、窓際の1番後ろの席から
太陽で反射して見辛い黒板を必死ににらみつける。
握り慣れない、保健室のものではない自分のシャーペン。
50分間の戦いと10分間の休憩。
それを4度も繰り返した頃には、
僕の体からは完全に力が失われていた。
めちゃくちゃ疲れた。
言葉通り、滅茶苦茶に。
大きく伸びをして、3度ほど続いた連続のあくび。
ようやくやってきた昼休み。
さすがに教室でぼっち飯するほど強くはなれなくて、
本日初めての保健室へ向かう事にした。
目を閉じてもたどり着けるお決まりのルートだ。
在室中の札がかかる扉を2回ノック。
「はーいどうぞ。」
中から聞こえる穏やかなそれは、
僕の心を落ち着けてくれる大好きな声。
しかし、その“大好き”が
恋愛感情とは別物であることに気づいたのはごく最近である。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
19 / 95