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もう離れられなくて#6
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「氏原先生、僕氏原先生とあいつが一緒にいる時の空気感、好きだよ。」
昼食を食べ終え、予鈴が鳴る少し前に
あいつは次の授業の準備をしに保健室を出て行った。
あいつのいるところでこんな言葉言うのは、
恥ずかしくて絶対に無理だから
氏原先生と2人きりの時にこっそりそう伝える。
氏原先生は嬉しそうに、
そして、恥ずかしそうに笑った。
僕もあれくらい、誰が見てもお似合いだと思われるような関係を築きたいと
そんな贅沢なことを思ってしまう。
あと2つ授業を教室で受けられれば、
少しは自信に繋がるだろうか。
明日、奏楽さんに自信を持って会いに行けるだろうか。
「僕も、そろそろ次の授業の準備行くね。」
氏原先生に手を振る事で、
元いた場所に戻らなければいけない理由を作る。
保健室よりも、教室にいる時間の方が多いなんて
いつぶりだろう。
「すごいね、兎毛成くん。成長だね〜。
無理はしないでがんばって‼︎」
優しい保健の先生の応援を背中に受けて
僕はほんの1ミリでも自信につながる可能性を信じて教室へ戻った。
5限の始まりのチャイムが鳴る直前、胸ポケットに違和感を覚える。
ブブッと小刻みに振動したスマホに手をかけて
まだ先生が来る気配がないのを確認し、通知のチェック。
『 s 』
っあ、来た……っ。
たった1文字の、その名前が目についた途端
心臓は跳ね上がる勢いで鼓動を早めた。
本日、初めての奏楽さんからのメッセージです。
昨日の夜ぶりに、奏楽さんです。
奏楽さんが、僕と言う宛先を選んで
僕に向かってメッセージを発信してくれました。
無意識に口角が上がってしまう。
1番後ろの席で良かった。
その内容はーーー。
『おはよ。』
いや、それだけかい。
思わず突っ込みそうになるのをぐっと堪えた。
全然お早くないからびっくりだ。
世間一般的に、この時間の挨拶は
“おはよう”ではなく“こんにちは”だろう。
どこまでもマイペースな奏楽さんに思わず笑いが溢れる。
“おはようございます。よく眠れましたか?”
僕にとってはこれっぽっちもおはやくない起床だが、
ここは奏楽さんのペースに合わせる事にして
丁度授業担当の教師の影が見えたので
慌ててそれだけ返信すると、再びスマホを胸ポケットにしまった。
暫くして再び震えたスマホを先生の目を盗んで確認すれば
『学校が終わったら電話くれ。明日の予定、決めよ。』
今度こそ、絶対絶対にやけてるから
教科書を立てて顔を隠した。
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