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もう離れられなくて#7
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「今日カラオケ行かね?」
「ハンバーガーの新作食べ行くぞー‼︎』
帰りのSTが終われば、
部活動のない生徒たちは口々にそんな会話を交わす。
もちろんそれは、毎日教室に通っている友達同士が交わす内容であり、
僕には縁のないものだ。
授業以外の時間を教室で過ごすのは
恐らく高校に上がってから初めて。
それぐらい、奏楽さんと付き合い始めた事は自分の心を入れ替えようと踏ん張る気力に繋がっていた。
なんというか、
今までの自分では考えられなかったこと。
なんというか、
ほんの僅かでも他人に甘えず自分の力で立っていこうと言う意識。
そんな、出会ってからほんの1ヵ月足らずで僕を変えてくれた人物から
昼間に請け負った命令は、学校が終われば電話をしろと言う事。
僕は慌てて教室を出ると、初めの頃に比べれば幾分か慣れた、
だがまだ少し緊張して震える手で
この世で奏楽さんにしかしたことのないスマホの操作を施す。
耳に伝わるコール音。
3コール
4コール
5コールと、奏楽さんを呼び出す音だけが耳の奥に響く。
もしかして、何か用事があったんじゃないだろうか。
やはり、何の連絡もなしにいきなり電話をかけるのは迷惑だっただろうか。
少し、調子に乗りすぎてしまっただろうか。
スマホを耳に当てたまま、
保健室による事なく昇降口にたどり着いた。
自身の靴を取り出して、
他の生徒と同じように校舎の門をくぐり抜ける。
そんな自分の姿を客観的に見れば、
これまでの自分とはまるで比べ物にならない、なんて思う。
僕を変えてくれた
少なくとも僕をカースト最下位から、
下から2番目位には引き上げてくれたであろう彼の声が
耳に届くのを待つ。
『…何。』
奏楽さんの声をして、僕の耳に届いたスマホからの第一声は、
寝ぼけているのかそれとも体調でも悪いのか。
昼間に自分が僕に送った内容をまるで1ミリも覚えていないような不機嫌な声だ。
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