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もう離れられなくて#8
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奏楽さんもしかして、朝…いや、寝起き?は
気分があまり上がらないタイプなんだろうか。
やっぱり電話なんて…
いきなりしない方が良かったに決まってる。
『何?』
つい、言葉を探して目を泳がせていれば
さらに追い討ちをかけるように
不機嫌な声色は僕の脳の奥深くまで突き抜けた。
繰り返されるその一言に、
まだ何も返せずに固まっていると
聞こえてくるのは奏楽さんの寝返りを打つ音、
息遣い、どこかスマホを持つ手の付近を掻いている音、と、溜め息…。
先ほどまでの期待とは打って変わって、
ひどく自分を責めた。
もしかして、奏楽さんは僕が知らなかっただけで
あまり眠っていなかったかもしれないのに。
僕が心配すると思って、
僕が気を遣って不要な心配をすると思って
眠ったフリをしただけかもしれないのに。
やりとり一つで奏楽さんのことを知った気になって、
馬鹿みたいだ。
恥ずかしいガキだ。
今日1日
たった1日だけ普通の生徒のように頑張れたからと言って、
奏楽さんの隣にいるべき人間な訳がないのに。
奏楽さんは、僕の都合でかけた電話なんかで起こして良い相手じゃないのに。
何、してるんだろう。
あり得ない…、嫌われてしまう。
「あ、ご…ごめんなさい、寝てましたよね…?」
ようやく口から出てきたのは、謝罪だった。
とにかく嫌われてしまわないように、
奏楽さんの邪魔をしてしまったことを、謝らなくてはいけなかった。
気を悪くしてしまった
迷惑をかけてしまった。
奏楽さんの睡眠を
奏楽さんの生活を、妨げてしまった
邪魔してしまった。
人と関わる事ってやっぱり苦手だ。
誰かの負担にならないことなんて
僕にはできっこないんだ。
奏楽さん
奏楽さんごめんなさい…
嫌いにならないでください。
押し寄せる不安と罪悪感は止まることを知らない。
なんだか目の奥が熱くなってきた。
呼吸も浅いし、少し苦しい。
あ、僕…今、すごく泣きそうだ。
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