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もう離れられなくて#13
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東口のロータリー。
何の疑問もなく辿り着いたけれど、
奏楽さんは電車じゃ無いんだろうか。
車やタクシーが並ぶロータリー。
まさかリムジンに乗って登場…?!
なんて馬鹿げた考えはよしておく。
ふと、気付いた。
奏楽さんが何処に住んでいる、とか…
そういえば何も知らない。
通っている高校を知っている奏楽さんからすれば、
僕の住んでいる地区に大体の目星はつくだろうけど。
もしかして海を渡るようなとんでもない地方から来てくれるんじゃないだろうか…
いや、それは無いか。
仕事的にも関東圏にいる可能性の方が高い…はず。
あくまで、はずでしかないのだが。
ピロン
この通知音に世界一早く反応したのは、
恐らく僕だろう。
瞬時に画面を開けば、
『俺の好きそうな炭酸買っといて。』
無理がある!!
炭酸!!
そもそも奏楽さん炭酸好きだったんだって
そこからだから、僕!!
甘いのが好きなのか、
柑橘系が好きなのか、
着色料全力の体に悪そうなのが好きなのか、
エナジー系が好きなのか…
え、急に無理難題突きつけられちゃった感半端ないよ。
炭酸ジュース1つでこんなに悩む日が来るとは思わなかった。
だってだって、この1本を失敗したら
ナベを振り回してまで決めた今日の服装も、自信をつけるために1日教室で過ごせた昨日も、苦手な電車に揺られたさっきの僕も、
全てが水の泡になりかねない。
気にし過ぎだろって笑う人もいるかもしれない。
だけど僕にはこの一つ一つが人生を賭けた勝負なんだ。
うわわわ、これはやばい。
どうしたらいいんだよう。
“任せてください‼︎”
送信っと…。
………いや、何してるんだ、僕。
言うことを聞かない指を仕方なくポケットに突っ込んで、
通路寄りのコンビニに立ち寄る。
予想通り…いや、
予想を遥かに上回る炭酸ジュースの種類の多さ。
気が滅入ってしまいそうだ。
『頼んだ。あと3分で着く。』
通知音なんて聞かなくても、
握り潰しそうな勢いでスマホを構えているんだから
秒で気づくのは当たり前。
なんと、頼まれてしまった上に考える時間すらくれないと。
やらかした、これは…
とんでもない失態だ。
ううぅ…。
「あ…あのお客様…どうかされましたか?」
飲料コーナーでうなだれていれば、
そりゃ店員さんも声をかけにくる。
迷惑な客だ。
コンビニにも迷惑をかけてしまうなんて、
あぁもうほんと、人間辞めたいよ僕。
「い、いえっ!なんでも…!」
慌てて立ち上がって、ちょうど目についたそれを手に取った。
迷っている時間はない、
これ以上ここに居るのは恥ずかしすぎる。
僕の人生をかけて選んだ炭酸ジュース。
「ありがとうございましたー!」
しっかりと小さなレジ袋に入れられたそれを眺めて
ひとつ、ため息をついた。
も、もし奏楽さんが好きじゃなくても、
僕はお前の事好きだよ。
な?だから安心しろよ。
一体誰に慰めの言葉をかけていると言うのか。
とりあえず落ち着こう、と大きく深呼吸をすれば、
まだ息を吐き切らないうちに鳴るスマホ。
今度は何度も震える方。
まったく、落ち着く時間もくれやしない。
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