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もう離れられなくて#14
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「…もしもしっ。」
『お待たせ。着いたよ。』
「っえ、ど…どこですか…?」
ぐるりと辺りを見渡すが、
奏楽さんは見当たらない。
流石に顔を忘れてるなんて事はないから、
居たらわかるはずなんだけど。
『そうだなぁ。…そのまま15歩、後ろに下がれ。』
言われた通り、15歩下がってみる。
何にもぶつかる事なく、転ぶ事なく達成。
『そのまま右見て。』
体育の授業さながらの“右向け右”を披露。
目の前にあるのは1台の黒い車だった。
『で、そこ開けな。』
「…?」
そこにあるのは、きらっきらのつやっつやのリムジンでもなければ、立派なセダンでもない
どこにでもありそうな普通のワンボックスカーで。
まったく予想もしていないこの状況に、
少しの期待と莫大な不安を抱えて恐る恐る手を伸ばす。
もしここを開けて全く見ず知らずの人が居たら
とんだご迷惑な話だ。
…とか、ここまで来てもまだそんなことを考える。
「すー…はぁ…。」
意を決して取っ手を掴む。…と、
バチィッ
「あわわぁ!」
突然指先に鋭い痛みが走る。
あ、忘れてた、僕静電気体質だって。
ゆっくりと扉が開く。
そこから漏れ出す空気はいつかと同じ、
爽やかで少し甘いあの大人の匂いだった。
スマホ越しに聞こえた声と車内から漏れる声とが重なり合う。
そしてそのどちらともが、くつくつと笑いを堪える様なもの。
「早速面白い事してくれるなぁ、お前は。」
「………ぁ…。」
「久しぶりだな。美晴。」
「……そ、奏楽、さん…?」
「なんで疑問形なんだアホか。」
「はいっごめんなさい!」
数秒前まで聞いていた奏楽さんの声なのに、
機械を通さないそれは新鮮で
29日の時を経て見たその姿は、
やっぱり完璧な容姿をしていた。
こんなに会わない期間があったのだから、
僕の中で完全に美化されまくっていると思ったのに
そんな事はなくて、
格好良さも、纏う色気も本当に何もかもが王子様。
「おい。」
「あっ、はい!」
「何してる。早く乗れ。」
「あ!ご、ごめんなさい…!」
あまりの美しさにその場に立ち尽くしてしまいました。
すみません、奏楽さん。
…そして扉を開けたここは助手席なのですが、
僕みたいな奴が奏楽さんの隣にお邪魔してよろしいのでしょうか…。
「し…失礼…します…。」
ばくばくばくばく
さっきから心臓がうるさいんだ。
扉を閉めた瞬間、この空間には奏楽さんの匂いだけが広がっていて
そこに居るのは奏楽さんと僕の2人だけ…。
考えただけで…とってもとっても倒れそうです。
「…さ、行こうか。」
どこへとも言わず奏楽さんはシフトをドライブに切り替える。
あ、ちょ、ちょっと奏楽さん、
運転、運転が少々荒いです、奏楽さん!
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