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もう離れられなくて#16
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僕を乗せた奏楽さんの車は、
あれよあれよという間にショッピングモールに到着した。
週末の昼下がり、駐車場が込み合っていないはずなくて、
何度も何度も周った末にようやく入り口からほど近いベストポジションを押さえる事が出来た。
その間に何度奏楽さんの舌打ちを聞いた事か。
いつ奏楽さんの機嫌が損なわれるか
こっちはドキドキのハラハラだった。
「さ。着いたぞ。」
「え、ここは…?」
「見てわからないか。イ〇ンだよイ〇ン。」
いやそれはよくわかっておりますけれども。
想像していた奏楽さんとのあまりにも大きなギャップに
口がもうずっと半開きなんです。
だってあのRickyが土曜日の昼に
普通に車に乗ってイ〇ンに行くと思いますか?
いえ、思いません。
きっと全日本人口の8割強がそう答えると思う。
知らないけど。
「な、何か欲しいものとか…あるんですか?」
「まぁな。」
自動扉をくぐり、目の前に現れたのはエレベーター。
自由の利く空間での密室となると、
さっきの車内とは全く別物のような気がしてまた緊張。
まあ初めの緊張がほぐれているかと言われれば
そうではないんだけれど。
ゆっくりと扉が閉まり、小さな箱は僕たちを下へ導いた。
1階に辿り着くと、再び狭い箱はアナウンスを鳴らして扉を開ける。
そこは広めの作りのフードコートになっていた。
たこ焼き、ラーメン、餃子と立ち並び、
そこかしこが家族連れや恋人同士で賑わっている。
どこからともなく漂う美味しそうな香りが、
ちょっぴり僕を幸せにしてくれた。
そうか、奏楽さんお腹が減っていたのか!
なるほど確かにここなら、予め何を食べるか決めていなくても
種類豊富な食べ物が揃っている。
ーーなんて僕の中で立てた予想は1%も当たっていなかったらしい。
ずんずんと前に進んでいってしまう奏楽さんからはぐれない様、
モノクロに纏まり、すらりと伸びた背中を必死に追いかけた。
暫く進めば目的の場所に着いたらしく、
ぴたりと止まった背中。
思わずぶつかりそうになる。
「え、あの……ここ…。」
「外に出たらまずタピオカに決まってるだろ。」
「………あ、はい。」
列を成すのは僕と同じか、それに近しい年齢層の女子。
たまに家族連れ。
少なくとも男2人で並んでいるのはこの中じゃ僕と奏楽さんだけだ。
ポップな看板に甘ったるそうな匂いを掲げたタピオカ&クレープ屋さん
の、目の前で、心なしかちょっとだけ嬉しそうにしている奏楽さんなんて、一体誰が想像できただろうか。
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