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もう離れられなくて#20
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音の大きさなんて、普段なら僕の前に部屋を使っていた人のをそのまま受け継ぐけれど
奏楽さんが調節してくれたそれはおそらく、
今までカラオケに行った中で一番歌いやすい環境で。
また奏楽さんの僕とは違う、他の人とは違う
凄いところを見つけてしまった。
勿論、それをプロと言うんだろうが、僕からしたら凄いものは凄いんだ。
奏楽さんを前にして
僕みたいに別に上手くもないがきが
一丁前に女性アーティストのバラードを歌う。
Rickyのファンの人に知られたら僕なんて即殺されるんじゃないかってビクビクしちゃう。
でも奏楽さんがこんな僕の歌、聞きたいって言ってくれたんだもん。
そうやってなんとか開き直った。
まあ、上手くはないんだけど。
別に、笑ってくれたっていいのに
奏楽さんはじっと歌詞の映し出された画面を目で追っていた。
「…っはぁぁ〜。」
歌い終わった瞬間、つい溢れる長いため息。
仕方ないじゃないですか。
こんなに緊張するカラオケ初めてなんですからねっ。
音程がわからなかったって言う理由で採点モードにしたことを後悔する。
いつもはもう少しだけ点数出るんだ、緊張のせいだ。
奏楽さんは80点を少しだけ超えた僕の歌に
3回だけ手を叩いた。
パチ、パチ、パチって。
…って辞めてくれません?
なんか、バカにされてる感じが凄いです。
「うまいじゃん、美晴。
…てかお前めちゃめちゃビブラートかけるな。」
奏楽さんはデンモクを操作しながら横目でチラッと僕を見た。
「そ、んな…上手く、ないですし…
ビブラート…?とかかけれないです僕…き、緊張で声震えただけです…。」
褒められ慣れないむず痒さと
目があった恥ずかしさと
綺麗な横顔。
あー、あーーだめ。
だめです、暗い部屋で画面の明かりに照らされる奏楽さんが格好良すぎてだめです。
両手でマイクを握り締めたまま、着席。
もう手汗凄くて今にも滑りそう。
バレないようにそーっとそーっと奏楽さんの整いすぎた横顔をもう一回だけチラ見。
この流れは仕方ない。
見てしまうのは、仕方のないことだ。
奏楽さんの存在が嘘ではないって感じたいから。
さっきの歌じゃないけど、
本当に幻なんじゃないかと思う。
夢なら、まだもう少し覚めないでいてほしいなぁ。
なんて。
「よーしーはーる?何なんだよこの距離感は。アホ。」
「ぅ、わっ!」
奏楽さんは50cm程あけて腰掛けた僕との隙間を埋めるように、ぐっと僕の肩を引き寄せた。
途端に香る奏楽さんの匂いと、近距離で感じる体温
とくん、とくんと鳴る僕のではないこの音は、奏楽さんのものだ。
「ふっ、元気な心臓だなぁお前。」
「っな、きゅ…急にこんなこと…するから……。」
「俺のせいだって言うのか?」
「……どう…考えたって、そうです…。」
「ほぉ?ついに反抗するようになったな。」
残念な事に、僕の凄まじい心音は奏楽さんにバレたようだ。
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