アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
もう離れられなくて#28
-
「家系ラーメンはな、味付けがワンパターンだから
麺の硬さと味の濃さ、それから脂の量を調節してもらうんだよ。
で、俺は硬め濃いめ少なめってこと。単純に野菜は好きだしな。」
「…ほおお〜。」
ズルズルと麺をすすりながら、そんな解説を受ける。
やっと、やっと謎が解けました。
ありがとうございます奏楽さん。
そして、その3つの選択なら、
僕も全く奏楽さんと同じものを注文する自信があります。
言うまでもなく、奏楽さんの真似をして注文したラーメンは
めちゃくちゃおいしかった。
家からそう遠くないこの店なら、奏楽さんとじゃなくても
また来ようかななんて思うほど。
少し長い髪の毛を耳にかける仕草が
妙に色っぽいんだ。
耳たぶに2つ並んでいる黒いピアスは、
奏楽さんのために作られたんじゃないかって疑うほど似合ってるんだ。
身に纏う服も、
横で並ぶペンギンさんも
ラーメンも背景も、なんだって似合ってる。
奏楽さんの周りにあるものの中で、
僕の存在…
それだけが似合わないような気がして。
人から見られるのが、怖い。
奏楽さんの価値を、下げてしまう気がして。
「…美晴?どうした。食わないのか。」
奏楽さんの丼の中はいつの間にか空になっていた。
僕がお腹減ったからって連れてきてもらったのに。
「…何かあったか?」
綺麗な顔が、心配そうに僕を覗き込む。
あ、やばい。また失敗しちゃった
奏楽さんにそんな顔、させるなんて。
「…大丈夫、です。」
「大丈夫じゃないだろ。」
「…その、僕でいいのかな…って。」
「…?」
つい、口から零れ落ちるのは
やっぱり自信のない僕で
奏楽さんみたいな人には、もっと綺麗な人、もっと優しい人が沢山居るはずなのに。
「と…っ、隣に、居るのが…僕でごめーー」
「それ以上言うと怒るぞ。」
「ゎぶっ!」
奏楽さんは、まだ話している最中の僕の口に
思い切りペンギンさんの顔を突っ込んだ。
それ、奏楽さんがさっき手拭いたやつ…。
「あのなぁ。俺は行きたいと思う奴としか飯はいかないし、乗せたいと思う奴しか車に乗せない。」
「……え、」
『だから自信持てよっ。』
奏楽さんの声をした黄色のペンギンさんが、
僕の鼻に頭突きをしながらそう言ってくれた。
……奏楽さんの言葉は魔法みたいだ。
ずっしりと重くのしかかった何かが、
穏やかに浄化していく気がする。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
44 / 95