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もう離れられなくて#30
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奏楽さんの車が、乗降場所に着いた。
ハザードをたいて、シフトをパーキングに入れた。
ドアのロックを解除した。
この後、僕はどうすればいいんだっけ。
あれ、やばい。
頭が回らない。
全然回らない。
「着いたんだけど。」
「あ、はい。着きましたね。」
荷物。
そうだ、荷物を持って、動かなきゃ。
えっと、扉ってどうやって開けるんだっけ。
何を言えばいいんだっけ。
どうすればいいんだっけ。
全く頭の働かない僕を見て、
奏楽さんはぶっと吹き出した。
「おま…っ、お前動揺し過ぎだろ…ふっ。」
多分、奏楽さんは今までの中で1番面白そうに笑っている。
何がそんなに面白いんだよー。
僕…こんなの、初めてなのに…。
「ぼーっとしててすっ転ぶんじゃないぞ。」
「こっ…転びませんから!!もう!」
奏楽さんのからかい口調のその言葉に、
ようやく少しずつだけど頭が正常に動き出した。
「じゃあな。帰ったら連絡しろよ。」
「……はい。」
最後にもう一度、奏楽さんの顔が近付いたから
思わずギュッと目を閉じる。
完全に身構えた僕のすぐ傍で、奏楽さんの息が溢れた。
「ふっ…ほんとなれないなぁ、美晴は。」
細くて長い指が、僕の耳をかすめて
頭の上で2回、ぽん、ぽんって跳ねた。
ほんと、ずるいよ。
奏楽さんは。
僕は初めて尽くしだっていうのに
慣れてるし、大人だし、格好いいし、決まりすぎ。
「またな。」
それを合図にドアを閉める。
窓の向こうで、ひらひらと手を振る奏楽さんに
僕もずっと震えてる手がバレないように勢いよく振り返した。
もう。
緊張しすぎてお腹痛いし。
振り返ったら僕が乗る電車、ちょうど行っちゃったし。
…心臓、落ち着ける為に二駅くらい歩こう。
遠くなっていく奏楽さんの車を眺めてそんな事を思った。
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