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もう離れられなくて#31
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11月最後の日。
季節はもう、冬の入り口だ。
そんな夜に線路沿いを歩く僕を見て、
通り過ぎる電車に乗る人や車を運転する人たちはどんな風に思うんだろう。
こんな寒い中ばかだな、とか。
大変そうだな、とか?
寒そうだなって思いますか?
でも大丈夫です。
だって心は汗だくになるほど熱くて、暑くて仕方ないんだもん。
さっきまでの奏楽さんとの余韻に浸りながら、一歩一歩足を進める。
楽しかった事はたくさんあったはずなのに、
嬉しかった事、面白かった事、奏楽さんの色んな顔を見れた事、たくさん発見はあったはずなのに。
「…うううあぁ~……ちゅー…ちゅーしたよ…うわあぁ~~…。」
頭の中からそれ以外、全部吹っ飛んでったんですが。
どうしてくれるんですか、本当。
柔らかかった。
あったかくて、気持ちよかった。
奏楽さんの熱が直に伝わって、心音が聞こえて、
僕のと違って落ち着いてて、でも少しだけ早かった…ような気がしたのは
僕の思い込みかなあ。
もし、それが僕の思い込みじゃなかったのなら、
ちょっとだけ…ほんのちょっとだけ、
調子に乗ってもいいですか?
なんて。
奏楽さんには決して言えないことを頭の中で問いかける。
と、突然鼻の頭に冷たい何かが落ちた。
「…?あ、雨…。」
昼は晴れていたはずなのに、
見上げれば空は厚い雲に覆われていて。
右を見ても左を見ても星なんてただの一つも見えやしない。
湿った空気とあまり冷たくない風は
このせいだったのか。
ぽつん、ぽつんと身体に当たる雫が心地よくて、
たまには雨に降られるのも悪くないとか思ったり。
雨なんて、髪はうねるし服はくっつくし、
この何とも言えない生臭さは若干苦手だったけど。
奏楽さんと会えた今日の僕はそんなちっぽけな事じゃ萎えたりしませーん。
むしろ、それすらも楽しくなってきちゃうんだ。
そう、今の僕は本気を出したら空を飛べる気さえする。
…まあそんなわけないんだけどね。
雨粒がアスファルトに弾かれる。
新調した服に楕円のシミを作る。
ちょっとのんびりしすぎたみたいだ。
雨脚は徐々に強まってきて、僕は仕方なく
数百メートル先に見える駅の明かりを目指して走り出した。
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