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もう離れられなくて#34
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帰る頃は、パラパラと降っていた雨だが
日付が変わる頃にはかなり強まっていた。
母親の傘は、玄関に置きっぱなしだったけれど、
この時間になっても帰ってこないと言う事は
やっぱりまた、会社かどこかで過ごすのだろう。
家にひとりで居るときに、電気をつけようだとか、テレビをつけようという気にはならず
コタツに潜り込んでスマホの明かりを頼りにするのはいつものこと。
これ、あったかいし髪も乾くから、僕なりの節約術。
と、
スマホの時刻が23時59分から0時00分に変わった。
昨日が終わって、今日が始まる。
12月1日。
実は、今日は僕にとって特別な日なんだ。
忘れられない出来事
あの日から、ちょうど1ヵ月が経った。
10時半くらいから既読のつかない奏楽さんは
今何をしているんだろう。
続けてメッセージを送ったら、迷惑になるかな。
曲を作っていたり、お風呂に入っていたり…とか?
もしかして、疲れて眠ってしまったんだろうか。
ま、いいか。
気付いたときに思い出してくれれば、それで。
通話なんてする勇気はさらさらないので、
僕は、僕で終わっているトーク画面に
一言だけメッセージを追加した。
“奏楽さんと出会って、付き合った日から
1ヶ月経ちました‼︎”
奏楽さん、覚えてる?あの日の事。
あの日、僕のお目当ては氏原先生だったはずなのに、
そんなこと忘れて帰っちゃう位、奏楽さんとの出会いは衝撃だった。
1ヶ月って早い。
奏楽さんと出会ったあの日から、
僕の毎日は奏楽さん中心に変わった。
奏楽さんの隣に並んでも恥ずかしくないように、
少しだけ教室で授業を受ける時間が増えて、
少しだけ大人っぽい服も手に入れた。
…背中のシールで台無しだったけど。
奏楽さんと毎日連絡を取り合っていれば
1人の時間は寂しくなくなった。
全部全部、奏楽さんのお陰です、
こんなに、消えてしまいたいと思わないで居られるのは。
この1ヶ月間のやりとりを遡りながら、窓の外の雨の音を聴く。
奏楽さんの返信速度にはすごく波があって、
1日1回の日もあれば
1分、2分おきに返信をくれる日もある。
対して僕の方はというと、
寝ている時間でもない限り必ずと言っていいほど3分以内に返信しているから、
早すぎてちょっと気持ち悪いかもしれない。
気をつけなきゃ。
必死過ぎるのは多分、よくないから。
眠たい目をこすりながら、
奏楽さんからの返信をしばらく待ってみたけれど
どうやら今日はもう返ってこないっぽい。
少し寂しいけど、きっとそれは欲張りだ。
奏楽さんに無理をさせたいわけじゃない。
僕はスマホを閉じてベッドに横になった。
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