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もう離れられなくて#36
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結局その日、奏楽さんが初めて返事をくれたのは
昼を過ぎたころだった。
”おはよ”
って、いつもと変わらない挨拶。
重すぎるのはダメだって、
早すぎるのはダメだって
昨日自分に言い聞かせたところなのに。
”おはようございます!!”
気付いた時には遅かった。
その時間、恐らく奏楽さんからメッセージを受け取ってから約10秒。
”早すぎ 笑”
ほっら笑われた!!
僕のバカ…もー、ほんと学ばない。
だけどね良いんです嬉しいんです、仕方ないんですよ。
奏楽さんから返事が来たんだから。
内容とかどうでも良い。
まだ僕を、見捨てないでいてくれてありがとうって、
ただそれだけなんです。
”なんで返事消してるんだ。”
そんな時、奏楽さんから痛烈な一言。
だってだって、それは、だって…。
既読したらいつだってすぐに返す僕なのに、指が止まる。
奏楽さんに、自分勝手な考えを押し付けてしまうようで、
自分だけが舞い上がっているようで、
呆れられてしまうかもしれなくて、
もしかしたら、いやな気持ちにさせてしまうかもしれなくて。
”…今日、1か月だったので。”
可もなく不可もない僕の通常通りの
面白さのかけらもない文章を一言だけ送る。
奏楽さんに、嫌われてしまいませんように。
なんだか待っているのも怖くなってしまった僕は、
慣れもしない料理を作って
(…と言ってもそこにあった傷みそうな野菜をぶちこんで、しょうゆと塩コショウのみで味付けした超絶簡単野菜炒めなんだけど。)気を紛らした。
お世辞にもきれいな見た目とは言えないものが出来上がったが、
味付けに間違いはなかったらしく、朝から何も食べていなかった胃袋は、それを求めるように脳に訴えかけているようで。
フライパンから直食いして、お決まりのように手を焼けどして、
お皿に盛りつけて、食べ終えて、片づけて。
僕の中では珍しく、いや、もはや初めて、
奏楽さんからのメッセージに気付かないふりをした。
けれど皿洗いまでを終えてしまえば、
再びそれが気になって仕方がないわけで。
恐る恐る裏向きのまま放置していたスマホをひっくり返す。
新着メッセージが2件。
”そうか、もうあれから1ヶ月も経ったのか。
ごめんな、記念日なのに会ってやれなくて。”
”昨日帰ってからずっと曲作ってたんだよ。”
そんなメッセージが届いたのは、
多分僕が手を焼けどして一人でわたわたしてる頃。
こんな鈍臭くて出来の悪い僕が隣に居るのは
やっぱり恥ずかしいんじゃないかってくらい、
奏楽さんは大勢から求められる歌手なんだ。
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