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もう離れられなくて#37
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僕なんかのために時間を割いていたせいで、
奏楽さんは曲を作らなきゃいけなくなってしまったのだろうか。
僕のせい、なのかな。
だとしたらそんな迷惑なことはない。
”僕なんかのこと構ってないで、休めるときにしっかり休んでくださいね?”
僕は、大丈夫だから。
奏楽さんを求めているたくさんの人のために。
本心のはずなのに、何とも言えない胸の痛みを自分ではどうすることもできなくて。
僕の中のわがままな部分が、
顔を出しそうになって困る。
奏楽さんの仕事は、そういうものなんだから。
僕の自分勝手な考えで、奏楽さんを苦しめたらいけないもん。
僕をそばにおいてくれるということは、
僕が彼の負担にならないよう、努めなくてはいけない。
すぐ近くに、職場も同じ、家も近所で毎日毎時間のように顔を合わせている彼らを見ているからか、
どうしても物足りないとどこかで感じてしまう僕がいた。
一人ひとり、その人それぞれに恋愛の仕方はあるというのに、
僕が奏楽さんにそれを強要することはいけない。
奏楽さんは奏楽さんなんだから。
”ありがとな、美晴。大丈夫だよ。”
奏楽さんは優しい。
奏楽さんは、大人だ。
奏楽さん、僕、あなたの負担にならないようないい恋人になるからね。
だから、まだ捨てないでください。
昨日の奏楽さんを思い出し、ふと台所へ向かった。
いつ買ったのか、それとも誰かからもらったものなのか、
未使用のふきんが二つ、棚の奥に隠れていたのを引っ張り出す。
紫のチェックと、薄いピンクのチェックが二つ。
…僕、ピンクってイメージではないと思うけど
…まぁいいや。
真新しいそれを三角形に折る。
くるくると細く丸めて、山折り、両端を谷折り…。
紐を探してみたけど残念ながら見つかりそうにないので、
仕方なく輪ゴムを二つ用意してーーー。
「ん、できた。」
やっぱり奏楽さんがやったように上手くは作れなかったけど、
この不格好なところも何だか可愛く見えてきた。
紫色のペンギンさんと、
その隣に寄り添うピンクのペンギンさん。
ねえ、奏楽さん。
僕たちもいつかこんな風に寄り添って、
互いを支えることはできるのかな。
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