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もう離れられなくて#39
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ある昼下がりのことだった。
なんとなく気分が乗らなくて、
体調不良を言い訳に学校を休んだ。
珍しくテレビをつけてぼーっとしていたそんなとき
スマホの通知音が鳴る。
実は2日前くらいに、奏楽さんから、
”ストレスが最高潮に達したから当たるかもしれないし連絡控える。”
なんて心配で仕方のないメッセージが届いていた。
それから僕から連絡を取ることは勿論なく、
奏楽さんからの返信も止まっていたから
久方ぶりのその音に飛びつくようにスマホを手に取った。
僕が学校を休んだ最大の理由。
奏楽さんが心配すぎて学校なんて行く気分になれない。
馬鹿らしくて自分のポンコツ具合に笑うことすらできない。
だけどこの時間、もし学校に行っていたら返信が遅れてしまうであろう
午後の授業の真っ最中。
奏楽さんが起きるくらいの時間だ。
受信したメッセージはやっぱり奏楽さんだった。
”ダメだ。何も手につかないし何もやる気になれない。”
奏楽さんは音楽に関してはすごくシビアな人だった。
曲を作ると決めたらもう、それは時間も忘れてしまうくらい永遠に作り続ける人だ。
連絡が返ってこないのは勿論だけど、
ちゃんと食事をとって、ちゃんと睡眠時間を設けているかも不安になるほど没頭してしまうらしい。
…らしい、でしかないのだけど。
”大丈夫ですか?たまには休まなきゃ壊れちゃいますよ…。”
こんな時、休んだほうが、とか少し寝たほうが、とか
そんなことしか言ってあげられない自分に腹が立つ。
もう少し気の遣える事が言ってあげられたら。
もっといい言葉をかけてあげられたら。
自分が無能すぎて情けない。
”わかってる。”
あ、ほら。
僕がダメすぎて、奏楽さんはきっと呆れている。
せっかく僕に連絡をしてきてくれたのに、
きっと僕に何らかの助けを求めてくれていたのに。
僕が何も奏楽さんのためになることを言えないから。
”そうですよね。すみません…。”
”いいよ。お前は悪くない。”
悪くないなんてことはないです。
僕がもっと、奏楽さんにとってメリットのある人間ならば、
奏楽さんがこんなに切羽詰まることなんてなかったはずなんです。
”僕に、何かできることはありますか?”
なけなしの質問。
あるわけない。
だって僕には音楽の知識なんてないんだから。
奏楽さんを癒す存在になるだなんて
そんなのは夢のまた夢で。
こんな人間、早く捨てなきゃ奏楽さんがダメになっちゃーーー…
”今から会えるか。”
…え。
突然のその言葉に
僕の思考は完全に停止した。
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