アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
もう離れられなくて#40
-
”今から会えるか。”
奏楽さんからの想像もしていなかった返信に
戸惑いを隠せない。
だってそうだろう。
精神状態の不安定さを物語るあんなやり取りの後、
突然送られてくるそれはそれまでのものと関連性はないように見える。
”勿論です、僕でよければいつでも。”
慌ててシャワーを浴びる。
勿論、風呂にもスマホは持って行った。
奏楽さんからいつどんな返事が来てもすぐに返してあげられるように。
”○○駅まで来れるか?”
奏楽さんとの2度目の待ち合わせは、
家から遠くも近くもない、名前だけ知っている駅。
”大丈夫です!”
”そうか。着いたら連絡しろ。”
”わかりました、すぐ向かいますね。”
奏楽さんの返信はそこで終わった。
既読はついているから、もうこれ以上は返す必要がないと踏んだんだろう。
本当だったら、奏楽さんに会えるんだから
ナベが選んでくれたものとは程遠いかもしれないけど、
それなりに格好には気を使って、上手くないなりにも髪の毛をセットしたり
並んで恥ずかしくない努力をしたいところだが、
今はそんなことしてる場合じゃないと思う。
奏楽さんの心が、気持ちが、調子が、
今どれくらい余裕がないのかは僕にはわからないけれど、
ほんの少しでも僕が奏楽さんの助けになるのなら、
自分のことなんてどうでもいい。
奏楽さんのために、半渇きの髪のまま走り出した。
頭では心配しているというのに、
曇っていたはずの空からはゆっくりと太陽が顔を覗かせる。
ああもう、何勝手にテンション上がってんだ、僕!!
奏楽さん
奏楽さん
奏楽さん。
急ぐからね、すぐに会いに行くからね。
だからあと少しだけ、待っていてください。
改札をくぐれば、電車はちょうど扉を閉めようと動き出したところで、
徒競走でもこんなに全力で走ったことなんてなかったのに
力の限り地面を蹴り上げた。
閉まり切る寸前、駅員さんに笛を吹かれて怒られたけど
そんなことは知ったこっちゃない。
これを逃してあと10分待っている時間なんて僕にはないんだから。
飛び込んだ電車で乗換案内を確認する。
うまくいけば20分で着く。
奏楽さんに到着時間を送信し、
僕は反対側の出口付近へそそくさと移動した。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
56 / 95