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もう離れられなくて#42
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奏楽さんは僕を乗せたまま、大通りを曲がると
なにやら細い道に入っていった。
まだ昼だというのにその道だけはなんだか薄暗くて、
不気味とまではいかないけれど、
なんとなく不思議な感じのするとおりだった。
「…どこに向かってるんですか?」
僕の問いに、奏楽さんは答えない。
「え…っと、奏楽さん?」
「行けばわかるよ。」
なんだか不安になってきました、僕。
奏楽さんもしかして、僕を山にでも捨てに行くんじゃないでしょうね。
いや、それはさすがにないか。
…だけどそれならなんで教えてくれないんだ。
僕はこれからどこに連れていかれるんだ。
か、帰れますよね?
ちゃんと家に帰してくれます…よね?
そんな恐怖で頭が埋め尽くされた頃、
奏楽さんはふー、と大きく息をついた。
「美晴。」
「はいっ。」
「出来ることあるかって言ったな。」
はい、言いましたとも。
それとこれが何か関係があるのでしょうか。
「…いいました…。」
「噛ませろ。」
「は?!」
いや、急に何を言い出すんですか。
ちょっとよくわからない。
いや、聞き間違い…では、なさそう、だけど。
驚きすぎて言葉が出てこないんですが、奏楽さん。
「ストレスがやばい。」
うん、それは聞いてましたし、
その顔を見るにかなり疲れていそうだからわかります。
わかりますけど…
「だからお前を噛ませろ。」
だからなんでそうなるの?!
奏楽さんは人間じゃないんですか?
お母さんは肉食動物か何かですか?
それとも特殊な性癖でもーー…
「なんだその反応は。」
何も言えず、固まったままの僕に
奏楽さんは真面目な顔したままそんなことをい言う。
冗談でも何でもない会話だとしたら、
奏楽さんってもしかして変な人ですよね。
まあそんなこと、僕が言えるわけないんだけども。
「え、えと…本気で言ってますか…?」
「お前が出来る事っていうからここまで来てやったのに…はぁ。」
「やっ、やります!僕でよければ噛んでください!」
「いったな。」
つい口から飛び出た、奏楽さんに服従を誓う言葉。
奏楽さんのためになるならば。
それは心の底からの本心であることに間違いはないのだが、
予想の斜め上を行った奏楽さんの発想に追いついていけないというか…。
「ほら。着いたぞ。」
「え……こ、ここですか。」
「煩いと困るからな。」
到着したのは船の形をしたお洒落な建物。
小さな噴水は太陽光にきらめいて虹を作る。
多分僕は年齢的に立ち入ってはいけないような気がするそこ。
心臓が、今にも爆発しそうなんですが。
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