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もう離れられなくて#43
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そこは駐車場から部屋までが直通になっている造りで、
僕を待つことなくすたすたと階段を昇って行ってしまう奏楽さんに
慌ててついていく。
階段の下にスリッパが置いてあって、
ここで靴を脱ぎなさいということだと思うんだけど
ちゃんと履き替えたのは僕だけで、
奏楽さんは靴を履いたまま何の躊躇いもなく部屋に入っていくものだから僕はびっくりだ。
奏楽さん、日本人じゃないのかもしれん。
たどり着いた部屋。
遠くでBGMが鳴っていて、
2人が並んで座っても余裕のある大きなソファとダブルベッド。
これは喫煙者あるあるなのかもしれないけど、
奏楽さんはまずテーブルの上に置かれている灰皿を確認して
そこに入れられているライターを取り出し、隣に置いた。
「まぁ座れよ。」
ソファの真ん中に座って言うことですか。
もう少し寄ってくださいよ、余裕はあるけどさ。
備え付けのものは使わず、自分の持っていたライターで取り出したタバコに火をつける。
吐き出す紫煙の匂いは、あまり得意ではなかったはずなのに
奏楽さんのものとなると話は別だ。
奏楽さんの動きを妨げないよう、
少し距離を置いて隣に座らせてもらった。
「…コーヒー飲みたいな。」
「いっ、淹れますよ?!」
隣に見えた棚の中に、ドリップ式のコーヒーとマグカップが見えて
慌てて立ち上がる。
「出来るのか?」
ちょっと馬鹿にされた気がしてむくれると、
奏楽さんはそれを見逃してはくれなかった。
「なんだその顔は。まずかったら承知しないぞ。」
…ハードルを上げてしまった、最悪だ。
テレビをつけて、僕にはよくわからない色々な操作を施して洋画を見始める奏楽さんの、
心強くも胸の痛む慣れたような作業を見ている気にはなれなくて。
必要以上にゆっくりとお湯を注いだ。
「…どうぞ。」
「お前先に飲んでみろ。」
「え、毒見ですか?」
いくらなんでもひどい話だ。
奏楽さんそんなに僕に信用ない?
悲しいんですけど、僕。
「…あっつ。」
僕のつい零れた本音に
奏楽さんはほら見ろといった顔でこちらを見た。
「俺にそんな熱いものを飲ませようとしてたのかお前。」
いや、淹れたてならこうなるってわかるじゃん。
いつかこの人に突っ込みを入れられるような対等な関係になりたい。
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