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もう離れられなくて#44
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少しぬるまったコーヒーをちびちびと飲んで、
次はボタンを押せば真ん中が開くシルバーの灰皿で遊びだす奏楽さん。
真面目な顔してやることとは到底思えなくて
さっきからニヤニヤをこらえるのに必死だ。
「美晴今日学校はどうしたんだ。」
「え?あー…ちょうど休んでたんです。」
「…そうか。」
どうして休んでいたか、なんて
奏楽さんにはとてもじゃないけど恥ずかしくて言えないし、
言ったとしても奏楽さんはそれだけの事でって僕に呆れてしまうかもしれないから。
理由を聞かないでいてくれる奏楽さんがありがたかった。
僕にそれだけ興味がないっていうことかもしれないけれど。
奏楽さんはここにきてようやく靴を脱ぐと、
くるぶし丈のくちばしだけ飛び出ているペンギンさんの靴下を恥ずかしげもなくさらしながら、ベッドにバフンと倒れこんだ。
「………く、靴下…。」
流石にこれは突っ込んでも仕方がないだろう。
そうでもしないと気になって永遠にそれを眺めてしまいそうだ。
「?可愛いだろ。ほら。」
奏楽さんは僕に向かって2つのペンギンさんがよく見えるように
体育座りをした。
サイズが合っていないのか、
そもそもこうなるべきなのか僕にはよくわからないけれど、
いびつな形をしたペンギンさんが靴に押しつぶされてひょっとこのように曲がったくちばしを突き出して僕を見てくる。
勘弁してほしい。
僕は今にも笑い転げそうなのにどうして奏楽さんは真顔なんだよ、
強すぎでしょ。やめてよもう。
「……すごくか…可愛いです。」
ペンギンさんじゃなくて、
それを履いている貴方が、です。
「だろ?」
奏楽さんは満足げに鼻を鳴らすと、
再び横になって自分の潜り込んだ掛布団を開いた。
「ほら。美晴…お前もおいで。」
ペンギンさんが視界から消えれば、
そこにいるのはどこからどう見てもマイナスのつけようがない格好良い奏楽さんで、
何を言ってるのかわからない字幕の洋画と
遠くで響くオルゴール
それから橙色に薄暗く調節された間接照明が
その美しさをさらに引き立たせているようだ。
僕はなるべく不自然にならないように、
ゆっくりと立ち上がり、招かれた場所へ向かう。
どうか、
どうかこの熱くて仕方ない顔が、
奏楽さんにばれてしまいませんように。
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