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もう離れられなくて#50
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真っ暗な部屋では、視覚が遮られるせいで
小さな音ばかりを耳が敏感に拾う。
僕は動いていないから、この布が擦れる音とか、
僕の頭の上で何かを探る音はきっと奏楽さんが出している音。
たまに触れる髪の毛を頼りに、奏楽さんの居場所を突き止める。
首筋に僕のではない髪が触れて、熱い息がかかった。
あ、噛まれるかもーー。
反射的に身体は強張り、
あの痛みを思い出せば恐怖にヒュっと喉が鳴った。
「っふ…噛まないよ。」
耳のすぐ傍で紡がれる奏楽さんの言葉。
言われた通り、奏楽さんは噛まなかった。
筋を辿るように舐め上げられた感覚に、ゾワリと鳥肌が立つ。
くすぐったくて、変な感じがして、
寒いわけじゃないのに何だこれ。
奏楽さんの舌が耳まで到達すると、
そこから離れて、次に奏楽さんの髪の毛が当たったのは、
僕のおでこと頬の辺りで。
「っ、ぅんーー…。」
忘れることなんてできない
最近も思い出しては赤面してた、
柔らかい感触が唇に当たった。
角度を変えて、また。
もう一度。
重なり合う僕のと、奏楽さんの唇。
どうしても力を込めてしまう僕の唇に
奏楽さんはふっと息を溢して舌で触れる。
驚いて入っていた力が抜けた。
奏楽さんの舌は、すかさず僕の口内に侵入すれば、
歯並びだけが取り柄の僕の歯列をなぞる。
ふわりと広がる奏楽さんと、たばことコーヒーが混じった味。
奏楽さんの吸ってるたばこは、
例えば街で吸ってる人とすれ違ったりしたら、嫌だなってなる匂い。
コーヒーは嫌いじゃないけど、
僕自身好き好んでわざわざそれを選んで飲むわけではない、
それくらいの味。
だけどそのどれもが、奏楽さんを作っている味だとしたら
僕はその全部が好きでたまらないということになるだろう。
奏楽さんが纏うもの全てを、
僕は恋しく感じてしまうだろう。
こんな味を知ってしまったら。
こんな奏楽さんを知ってしまったら。
これ以上は、溺れちゃう。
嘘、もうとっくに溺れているかもしれない。
這い出せない底なしの沼に、両足を落としてしまった。
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