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もう離れられなくて#53
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冷め切っているであろうコーヒーに、
奏楽さんはもう興味がないようだ。
冷蔵庫の中にある、神秘的な造りの自販機からコーラを取り出した。
数ある炭酸の中からコーラを取り出す姿を見ると、
この間僕が悩み抜いて選んだアレは正解だったんだってちょっと嬉しい。
奏楽さんはソファーに座ると僕の隣でもう一度たばこに火をつけた。
こんな時間じゃまだ面白いテレビはやってないし、
適当にチャンネルを回してみたけどどれも旅番組やニュースばかりで電源を落とす。
見ていたはずの洋画は、主役が誰なのかも、
どんなストーリーなのかもわからないまま終わっていた。
奏楽さんのたばこを持っていないほうの手が、
僕の脚に降ろされる。
長い指がぐっと押したそこは、奏楽さんが歯を立てた場所で。
「っいいぃだだだだっ!!」
「大袈裟だよ。そんな痛くないだろ。」
「いったいです!!」
大袈裟なんかじゃない、本当だ。
服を着るのだって、かなり痛みをこらえてた。
腕を上げるだけでも痛むのに、
動いて服が噛まれた部位に擦れるだけで息を詰めるレベルなのに、
ピンポイントでつつかれて我慢できるわけがない。
行為を終えた後、服を探すためにライトをつけて初めて見た自分の身体に恥じらいは飛んでった。
というか、初めてのことが多すぎて、
今日起きた出来事の9割9分が初めてで、
もはや何を恥ずかしいと思えば良いかもわからない。
だから、しっかりくっきりはっきりと残った奏楽さんの歯型を、
本人に見せて訴えかけてやったんだ。
めーーちゃめちゃ痛かったんですよって。
そしたらこれだから、
奏楽さんに反抗なんて、しない方が身のためかもしれない。
奏楽さんは何度か灰皿の淵に付いているボタンをぷしぷし押して灰を入れ込むと、
僕の腕を引き寄せた。
「だっ…からそこ、も!!」
「あぁ…ここもか。悪いな。」
絶対思ってないし、その言い方。
奏楽さんの指が頬を取る。
突然の接近に目を見開く僕とは裏腹に、
奏楽さんはまつ毛を伏せた。
っ、あ…この流れ、は。
唇に当たるのはさっきも何度か触れた感触。
でも今さっきまで吸っていたたばこのせいで、
今度のキスは少し、不味い。
僕にはまだ、そいつの美味しさはわかりません、奏楽さん。
と…
「いっ、いららら、いらいっ!」
突然下唇に立てられた歯に、
僕は反射的に奏楽さんの肩をばしばしと叩く。
唇はダメ、とれちゃう。
ちぎれちゃう。
頭の中で想像したグロすぎる光景に
サーっと血の気が引くのを感じた。
「…さ、最後って…言いました…。」
「これは噛んでません。はむはむです。」
「………。」
謎の屁理屈を真顔で言ってのける奏楽さんに、
やっぱり僕は反抗出来ない。
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