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もう離れられなくて#56
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お母さんはだいぶ僕に興味津々らしい。
いつも仕事仕事で疲れているはずなのに、そんな表情は一切なくて。
というか、ほんの少しの空き時間すら僕で遊んでんじゃないかって思う。多分そう。
「相手~~なかなかのメンヘラ~??」
「ち、ちがっ…。」
奏楽さんはメンヘラじゃないもん。
僕の事噛んで、ストレス解消してただけだもん!
…て、それってメンヘラよりもたちが悪い気がするけど。
奏楽さんなら問題ない。
うん、何も問題ない。
「っか~~アンタいいねえ!名前なんて言うの?」
「……奏楽さん。」
「…年上?」
「うん。」
さん付けが突っかかっただけのようだ。
よかった。
奏楽さんが中性的な名前だったことに安堵する。
だってもし僕みたいなガッツリ男感あふれる名前じゃ
まずそこを説明しなくてはいけないから。
僕の周りは恵まれているから、そういう関係の相手が男だったとしても
気持ち悪がられるようなことはないかもしれないし、そう願いたいけど、
僕と生きてる場所が違うお母さんでは、少し違って。
いくら親とは言えそれを言うのに抵抗がある。
お母さんは不思議な顔をしていた。
その理由は僕にはちょっとわかんない。
「ねえその子のさ、名前は奏楽さんなんだよね?」
「?…うん。」
「苗字は?」
「え?」
「…え?」
お母さんのその質問に、僕は返す事が出来なかった。
それに一番驚いたのは、たぶん僕自身。
考えてみれば変な話だ。
僕と奏楽さんは曲がりなりにも付き合っているわけで
なのに僕は奏楽さんという名前しか知らないわけで。
…Rickyって、呼んでたから奏楽さんから教えてくれたんだっけ。
てことはもし、奏楽さんがRicky呼びを突っ込まなかったら、
僕っていまだに奏楽さんの名前すら知らなかったんじゃ…。
「はい、アウト~~~~。」
お母さんは大きなため息をついて、
呆れたぁとか何とかぶつぶつ言って再び化粧をし始めた。
い、一般的にはそりゃアウトかもしれないけどさ。
でも相手を見てから言ってほしいよ。
聞けるわけないじゃん。
悪用なんてしないけど、奏楽さんみたいな立場の人なら
そういうのに人一倍敏感なのかもしれないし。
それなら、まず僕は怖い人じゃありません
僕は信用して大丈夫な人間ですって事、奏楽さんに知ってもらわなきゃいけないから。
だから、僕から奏楽さんに何かプライベートの事を聞くのは躊躇いがある。
この家で僕がそうであるように、
奏楽さんも、僕に対しては言いたい事だけを言ってくれていれば良いと思ってるんだ。
僕の事とか、いいから。
奏楽さんを苦しめたくないって、その一心。
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