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なんて素敵な#14
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奏楽さんの元に運ばれてきたのは、クリーミーさが見た目にもよくわかるカルボナーラだ。
ブラックペッパーのスパイシーな香りが僕の鼻を幸せにしてくれる。
「…ブラックペッパー追加したいんですが。」
「かしこまりました!今お持ちいたします〜。」
え、既に結構いい匂いさせてますよ奏楽さん。
もっとかけるんですか?辛くなりませんか?
まあでも…メロンソーダにタピオカをぶち込む様な人なんだ。それに比べれば見た目も味も予想がつくんだから、問題ないか。
…って、僕はそんな事を気にしている場合ではなかったんだ。
先ほど奏楽さんからブラックペッパーを頼まれた女性店員は、キラキラの笑顔でお盆を片手にこちらへやってくる。
片手サイズの胡椒の瓶をわざわざお盆に乗せるはずが無い。
僕は、気づいてしまった。
彼女が近くにつれて強まる匂いに。
臭いんじゃない。いい匂いなんだ。
でもコレ…この感じはちょっと、想像以上かも…。
「お待たせいたしました!ブラックペッパーといじわるスパになります。ご注文は以上でよろしいでしょうか?」
「はい。」
……来た。来たよ真っ赤っかなパスタ。
写真以上に赤く染まったパスタには、炎を連想させるような一本丸ごとの唐辛子が3つ。
中心で支え合うように、山を作っている。
「いただきます。」
「…あ、い……いただきます…。」
今回ばかりは、きちんと手を合わせる奏楽さんに見惚れている余裕は無い。
奏楽さんの方から香るカルボナーラの香りも、
更に振りかけまくって変わり果てた姿に勿体なさすら覚えるブラックペッパーの香りも、今の僕にはわからない。
ただ僕は…目の前でごうごうと燃えたぎる炎と睨み合いを続けている。
そんな時、奏楽さんはスプーンの上でクルッと器用にパスタを纏め上げて微笑むんだ。
一切の陰りもない、どこまでも格好良くて綺麗な
優しさでいっぱいの瞳をして。
「美晴。今日は怖い思いをさせた詫びに俺が奢ってやる。
残さず食べてくれるよな?」
……悪意しか感じられないその言葉に、僕は家に胃薬があったか記憶を辿る始末だ。
何をどこまで計算しているのかわからない。
僕が見ていたのが本当は自分の指だったって、これは多分気付いている。
気付いていて、僕が正直になれない事を分かった上でやったんだ…。
「も、勿論です…美味しく、いただきます……。」
いじわるなパスタと奏楽さんに、心の中でバカっと叫んだ。
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