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なんて素敵な#16
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ようやく最後の一口まで辿り着いた。
長かった道のり。
奏楽さんはいつか完食していて、一人戦う僕を意地悪な笑みを浮かべながら眺めていた。
「…大変、お待たせしました。」
涙でぼやける奏楽さんに、腫れているせいで呂律の危うい口調で言うと
奏楽さんはまた笑う。
歯形を見た時思ったけれど、この人歯並びも綺麗だ。
柔らかな唇の隙間から覗く白い歯は、上と下とが均等に並んで重なり合っている。
あんなに胡椒を混ぜ込んだのだから、前歯に一粒くらい付けておいてくれれば人間味も出ただろうに
そんな欠陥は一つもない。
何処までも完璧な御伽噺の王子様が、そこに居る。
…勿論、それは黙っていればの話なのだが。
いや、声も口調も王子のそれなんだ。
でも時折見せる子供らしさやぶっ飛んだ事を言い出すところが、可愛くて。
見ているだけで視力が良くなりそうな、不思議な力でも持っていそうだ。
そんな目の保養を薬に、鷹の爪を巻き上げたフォークを口元まで運ぶ。
と、その時
自身の顔の位置まで持ち上げた腕を、奏楽さんの白い手が掴んだ。
「え?あの…。」
僕より熱い手のひら。
雪のように真っ白なのに、子供体温なのだろうか。
さらさらの肌触りで、きゅんと胸が跳ねる。
「俺も食べてみたい。」
「えっ…だ、大丈夫ですか…?」
奏楽さんは、僕のこの汗ばんだ顔が目に入らないんですか。
掴んだ腕すらしっとりしてると思うんですが、それでも挑戦するんですか。
「お前が大丈夫で俺が大丈夫じゃない訳ないだろ。誰だと思ってる。」
…案外、負けず嫌いなんですね。
言いかけた言葉は喉から飛び出す直前に、熱を持った唾液と共に飲み込んだ。
僕の手が、奏楽さんの口元へと誘われる。
無意識に指に力が入って、さっきから小刻みにパスタが震えて、心臓は僕の体をスピーカー代わりにして爆音でビートを刻む。
空いていた片方の手で、少し長めの前髪を耳にかける仕草が絵になって、どうしても魅入ってしまう。
一つ一つの動きを写真に収めておきたい程
どれもこれもが格好良いんだ。
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