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「笹本君、A会議室の掃除終わったら休憩入ってきていいから」
梅雨明けの昼下がり、明るい日差しが差し込む広い会議室の中、ひっそりと掃除を終えて俯きながら部屋を後にする。
高そうなスーツに身を包み、忙しそうに書類を持って早歩きで通り過ぎる人たちにぶつからないように端を歩く僕は、いつも通り惨めだ。
誰にも僕の存在を気づかれないように、お昼ご飯用に持参したおにぎりを持って屋上へ向かう。
一日の中で唯一の楽しみとして僕自身に許している時間、
それは、彼を遠くから一目見ること。
遠くに見える智明兄ちゃんは、僕の視線に気づきもせず、今日も遠くを見つめて煙草をふかす。
少し眉間に皺を寄せながら吐く息を白くして、きっと弓弦くんのことを想っているんだろう。
伸びた前髪が風に揺れて、まるで彼もそこから風に乗って消えてしまいそうだ。
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