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「笹本、もう大丈夫だ、心配ない」
「…」
できる限り落ち着いて声をかけると、笹本も段々落ち着いてきたのか
びくびくと震えていた体から少しずつ力だ抜けていく。
内心焦っている気持ちを抑え、彼に不用意に近づかないようにして
距離をとったまま声をかけ続けた。
「俺が見えるか?」
「…」
声に反応して、少しばかり視線が動く。
いつもはベッドに横たわって天井だけ見つめているその視線が俺に向けられる。
「今日はずっと一緒にいてやるから、もう怖いことはないぞ」
「…」
不安げな瞳が揺れて俺を見る。
「…大丈夫だ、凪」
名前を呼ぶと、笹本はぴくっと反応して体から力を抜いた。
まだ手に持っているハサミを取り上げる必要があるが、また暴れてしまっては元も子もないので
名前を呼び続けながら、ゆっくりと近づいた。
「凪、安心しろ、ここには怖いものはない」
「…」
「疲れたよな、凪、ゆっくり休もう」
凪、と声をかけてやる度に長い髪の間からその瞳が揺れる。
やがて、手の力が抜けたのかハサミを床に落としたので、
怖がらせないようにゆっくりを近づいてそれを取ると、
すぐ後ろに控えていた新田先生に手渡した。
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