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自分一人で考えても答えが見つかるわけではないので早々に諦めて、
トランシーバーの電源をいれて、ダイニングテーブルに置きっぱなしにしていたパソコンを持って自室に戻る。
トランシーバーからは時折凪の苦しそうな声が聞こえるが、まだ眠っているのだろう。
何かあってもいいように音量を上げて机の上でパソコンを開いた。
“性的虐待 トラウマ フラッシュバック”
ネットで検索してみても、担当医から聞いている以上の新たな情報はない。
ただ、個人のブログのようなところで体験談を見つけて読んでみる。
―僕が同級生からレイプされたのはもう4年も前だけど、未だに昨日のように覚えている。
感触も、痛みも、気持ち悪さも、苦しさも全部。
カウンセリングも受けていて、日常生活は以前よりもマシに送れるようになったけど
悪夢だけはなくならない。
複数人で寮部屋に押し入ってきて、ベッドに僕を押さえつけて後ろの穴をこじ開けられる。
何度も何度も犯された記憶がすぐに蘇ってきて、
どこにいても、誰といても、頭の中でそのときの映像が再生される。
わけがわからなくなって外で発狂してしまったこともあって、
それ以来外に出るのも怖いし、そんな僕と一緒にいてくれる友達なんていない。
しかも、男のくせに男にレイプされたなんて恥ずかしくて言えない。
いつも独り。
いつも孤独。
死んでしまえたらどんなにいいかって思うけど、いざ死ぬとなると怖いんだ。
手首から滴る血を見ながら、体が冷たくなっていって、頭がぼんやりしてくる。
死を予感すると決まって怖くなって助けを呼んじゃう。
もうこんな生活嫌なのに…
きっと一生、逃げ出すことなんてできやしない。―
彼のブログは、他愛もないことからフラッシュバックに襲われたことまで
数か月間に渡って公開されていたようだが、この文章を最後に更新は途切れていた。
ネット上の情報なんて、どこからが本当で嘘なのかわかったものではないが、
彼のその後がどうしたのか気になった。
もしこの文章が本当だったとしたら、担当医が言っていた凪が眠れないのも、
さっきのフラッシュバックも、ここに書かれているように頭の中で再生されて
あたかも今体感しているように辛いんだろうか。
そんな凪を、どうしたら救ってやることができるんだろう。
“淫乱”
そう言ったあの日の自分の発言を取り消したい。
凪、ごめん。
ごめんな、凪。
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