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ベッドの上で余韻に浸りながらぼうっとしてると、「夏木、メシ」って明智君に呼ばれた。
行為が終わった後、明智君はいつも早々に立ち上がってこうして夕飯を準備してくれる。オレが買って来たコンビニ弁当を温めてくれることもあるし、レトルトを湯煎してくれることもある。
今日の夕飯は、レトルトのカレーとレタスをざっくり割っただけのサラダだ。
明智君は優しいなぁっていつも思う。優しいっていうか、マメ? 甲斐甲斐しい? いつかホントの恋人ができても、こうして彼女のお世話をしてあげるんだろうか?
それとも……ホントの恋人が相手なら、えっちの後でもうちょっとイチャイチャを続けたりするのかな?
自分がセフレなんだなぁって思うのは、こんな時だ。
イチャイチャが物足りないって思う時でも、それをねだる資格がない。後ろから抱き着いて甘えたり、キスをねだったりもできない。そして、明智君もそれをオレに求めない。
えっちが終わるとさっと身を起こし、ゴムの処理をして服を着る――この関係が始まってから、明智君はずっとそうで。オレは余韻に浸りながら、彼の姿を見つめるしかなかった。
「夏木、早く服着な」
生徒に指導するのと同じ口調で、オレに着衣を促す明智君。
のろのろと身を起こし、お尻の違和感にちょっと顔をしかめつつ、オレは下着を拾って身に着ける。
明智君は先に食べ始めてて、もうオレの方を見ていない。それを寂しく思いつつ、シャツを着てスラックスをはいた。
カレー皿の前に座り、「いただきます」と手を合わせる。
レトルトのカレーはちょっと辛さがキツかったけど、明智君の好きな銘柄かも知れない。そう思うと、美味かった。
カレーの後にケーキを食べて、それであっさり解散になった。
オレはケーキ、明智君はプリン。ブラックのアイスコーヒーをコップに入れてくれて、ケーキと一緒にごくごく飲んだ。
「このコーヒー、次ん時に買って来ようか?」
「おー、気に入ったんならそうしろよ」
ケーキを食べながら、何気ない会話を交わすのが好きだ。
次に、っていうオレの言葉を、否定されなくてホッとする。明智君は無意識に返事してそうだけど、だからこそ余計に、次もあるんだって分かって嬉しい。
「じゃあ、帰るね」
玄関で声を掛けると、「気をつけてな」って言われた。そんな些細な気配りも、オレの大事な宝物だ。
年に3回か4回くらい、泊まってくこともある。それが毎回にならないのは、オレたちが教師っていう人種だからだ。
誰かに見られる訳にはいかない。誰かに感付かれる訳にもいかない。いつかは終わる約束だから、こうして時々楽しめる関係。
それがセフレってことなんだと、オレはちゃんと理解してる。
でも、ホントは寂しいし、物足りない。
いつかは終わる関係だって分かってるけど、終わらせたくないって思ってる自分もいる。
いつまでこうしてセフレでいられるんだろう?
いつまで彼の、特別でいられるんだろう?
いつか、ホントの恋人ができるまで。その期限はあやふやで、だから余計に、割り切ることはできそうになかった。
教師って言う職業だと、特に男の場合、結構人気が高いらしい。堅実だとか、安定性があるとか言われるんだって。
「合コンでも人気高いよ」
って、よく言われる。
今の職場に独身の女の先生はいないけど、もしいたら、すぐに明智君にアピールしてるだろうなって思う。
一方のオレはっていうと、大学卒業してすぐの時はよく合コンにも誘われたけど、最近は全然行ってない。
単純に忙しいのもあるけど、オレ、人見知りだし。その場のノリで楽しく話すことができなくて、いつもぽつんとするばっかだった。
明智君も、合コンとか行ってないんだって。「面倒だから」って聞いて、すごく納得したけど、勿体ないなぁとも思う。
同時に、ホッとしたのは内緒だ。
明智君は格好いい。職場でも、プライベートでも格好いい。そんな彼が、合コンでモテないハズがない。
そしたら恋人ができるのも、きっとすぐで――そうしたら、この関係も終わってしまう。
明智君は、今は特に積極的に恋人募集してないみたい。
それって、今のとこ性欲処理に困ってないからなのかな? オレで満足してくれてる?
恋人募集してないのはオレも同じだけど、モテるだろう彼とモテないオレとじゃ、多分その意味合いも違う。
そして、それは周りの人から見ても、同じみたい。この前の職員室での雑談でもそうだった。
「明智先生は、恋人欲しいとか思わないんですか?」
誰かの問いに、明智君はふっと軽く笑って、「ないっスね」って答えてた。
「オレより、夏木先生に訊いてくださいよ。ねぇ、夏木先生」
「うえっ、オレっ?」
明智君の無茶振りに慌てたけど、オレの恋愛事情なんて、その先生には興味なかったみたい。
「ああー、夏木先生は。ねぇ」
そんな風に流されて、それで会話が終わっちゃって、オレは正直モヤッとした。
明智君に恋人がいないのは不思議で、オレに恋人がいないのは不思議じゃないのかな?
確かにそれはその通りかも知れないけど、オレが本気で恋人募集してないのは、明智君のことが好きだからだ。
ただの職場の同僚で、男で、セフレなだけの人だけど。でも、女の人なんかいらないって思う位には好きだった。
ただ、こんな本音は、明智君には言えない。
好きになっちゃダメとかの約束はしてないけど、セフレな以上、明智君はオレに恋愛感情を求めてない。
もし、えっちの最中とかに、ぽろっと「好き」って言っちゃったら――恋人ができてなくても、終わりになっちゃうかも知れない。
それがオレは怖くて、そんでちょっと寂しかった。
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