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02* 「……咲樹が、泣いてたから」
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「きみの名前……教えてもらえたり、しない?」
「あ……相原、咲樹」
自分の名前も嫌い。
この女みたいな名前のせいで、昔からいじめられてきたんだ。
「咲樹ね。いい名前じゃん」
「……え?」
今……俺の聞き間違えでなければ、いい名前って言った?
俺の名前を? ……信じられない。
そんなやつ、はじめてだ。
「女みたいで……変、だろ?」
「なんで? 綺麗な名前だし、俺は羨ましいけどなぁ」
はじめて、言われた……。
羨ましい? 俺の名前が……?
なんだか嬉しくて、涙がこぼれそうになる。
「……あり、がとう……」
自然と笑顔がこぼれる。
笑えたのなんてそれこそいつぶりだろう。
小学校低学年、とかかな……。
だからこそ、嬉しくて。俺、まだ笑うなんて感情残ってたんだな……。
それなのに、何の反応もせず固まる藤本を見て、現実に引き戻される。
そうだ……俺、この笑顔で人を不快にさせるんだ……。
「ごめ……気持ち、悪いよな」
『そんな顔で笑わないでよっ! 気持ち悪いっ……』
あの日、そんなことを言われた。
それ以来、人前で笑うことが怖くなって……。
あぁ……思い出したくないことを思い出した。
また負の感情に支配されはじめる俺の体。
もう……藤本と話していても藤本を不快にするだけだ。
「……咲樹」
「え……?」
俺が反応するよりも早く、藤本の匂いが俺を包む。
え……な、なに、してんの……?
戸惑う俺が離れようと試みても、思ったよりずっと強い力で抱きしめられていた。
な、なんでこういうことするんだろう……。
「……何か、辛いことがあったんだろ? 辛い人生を歩んできたんだろ?」
「な、に……」
「ごめん。……咲樹が、泣いてたから」
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