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08* 「……咲樹、目に毒すぎる」
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「……咲樹、大丈夫?」
「あ、うん……ていうか、よくここが分かったね?」
藤本は俺の口元のガムテープをはがしてしゃがんだ。
俺がそう気になった事を問いかけても、藤本はバツが悪そうに目線をそらすだけ。
やっぱり……まだ、怒ってるのかな。
でも、その目はさっきまでの殺意を帯びた目ではなくて申し訳なさそうに垂れていた。
「……ホント、心臓止まりそうだった」
「はは、俺も。……だって藤本、殺すとか言っちゃうんだもん」
「そりゃ……だって。咲樹のことバカにされて腹が立って」
拗ねたように口をとがらせる藤本が、なんだか可愛く見えて仕方ない。
藤本が解放してくれた手で藤本の髪をサラ、と撫でると急に安堵感が襲ってくる。
「っ……え? 咲樹、なんで泣いて……俺、そんな怖かった?」
俺はそっちじゃないとかぶりを振った。
藤本がああいってくれたことは、正直嬉しかったんだ。
「あの子たちに……っ、ここに連れてこられる間、不安で仕方なかった……。ずっと、頭に浮かぶのは藤本ばっかで。助けに来てくれるのを待ってたんだ」
「……ごめん。遅くなって」
ちがう。謝ってほしいわけじゃないのに。
俺はじっと藤本の目を見つめた。
「……来てくれて、ありがとう。本当にうれしかったよ」
藤本は俺の顔を気持ち悪いと言わないから、ふっと笑いかける。
だって、藤本まだ心配そうな顔してんだもん。
あ、ほら、すぐ顔赤くする。ふふ。
「……確信犯?」
「ん? なにが?」
「……咲樹、目に毒すぎる」
「えー、なにそれ」
立ち上がった藤本につられて俺も立ち上がる。
目に毒って、それ褒めてるのかな。
って苦笑いしていたら、不意に頭を撫でられた。
「咲樹は可愛いってこと」
「っ……もー! それ、ずるい!」
顔が真っ赤になってしまって悔しいので、そうやって抗議してみる。
俺……可愛くないけどなぁ。
でも……何故か藤本が楽しそうだから、いいか。
「ほら、もう帰ろう?」
「……うん」
藤本に差し出された手をおずおずと握る。
大丈夫……藤本と一緒なら、俺は生きていける気がした。
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