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#4 花好き。
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後日保健室へ向かうと自分のジャージが戻ってきていた。ジャージを手を取ったときほんのりと洗剤の香りがしたのは態々洗濯をしたのだろう。
今まで西田も含め自分の傍にいる女は香水を付けたがるのか甘ったるかったり、鼻を突くようなキツい匂いだったりする。
普段は私物を貸してもその女の匂いが私物に移ってしまい、あまりいい気はしないから私物を貸すという行為はしたくなかった。
しかし、今回は清潔な匂いで返ってくるものが新鮮でその香りを嗅いでは自然と表情が綻んでいる自分がいた。
あからさまに、ニヤケていると分かったのか西田に「珍しく亨が笑ってるー」などと茶化されては急に恥ずかしくなり、白を切って出て行ったのは今朝の話。
綻んだからと言って男のことをどうも思わないが悪い気はしなかった。
現在は放課後、いつもの様に西田に再び待つようにせがまれたが待つ気など微塵もない。
保健室をそのままスルーして玄関先へと向かおうとした時·····
「亨。待って。」
背後から女の甲高い超えがしてヒールの音と共に此方へと近づいてくるのが分かる。
内心「しまった·····」と思いながらも振り返ると案の定、西田がそこにいた。
「待っててって言ったじゃない。でも今日は捕まえた。」
西田は右腕に抱きついてくるなり、態とらしく胸元を腕に押し付けてくる。
こんな公の場で他の教師にでも見つかったら大事になるのではないかと内心冷や汗をかく。
亨は深く溜息をついたが、ここで断ると彼女の機嫌を損ねかねないので、西田が腕を引っ張って行くままに着いて行った。
連れていかれたのら保健室で中に入ると先約がいた。保健室の中心に置かれているテーブルの椅子に此方に背を向けて座っている男の姿を見てもしや·····と思って息を呑む。
人が入ってくることに気づいたのか男が振り返ってくると互いに目が合い、向こうもハッとした表情になった。
「葵くんお待たせ。ごめんね。」
「いいえ。」
「葵くん怪我が多いけど大丈夫?」
「僕、おっちょこちょいなので平気です。」
西田は救急箱を手にしてテーブルに置き、消毒液とピンセットにガーゼを挟んでは男の顔に近づけようとしたが男は顔を背けた。
「大丈夫です。自分でやりますから。
先生は気にしないで下さい·····。」
「そう·····。あ、とお·····塩谷くんも座ったら?」
頬に出来る傷など違和感でしかないのに深く事情を聴かないのは西田らしかった。
西田に促されて、渋々男のいるテーブルに近づくと男の斜め向かい側に座った。
男は鏡を見ながら自分で頬にできた擦り傷を消毒しては絆創膏を傷口に貼っていた。
暫くすると西田が職員室に行くからと言い、ウィンクを自分に向けてきては保健室を去っていった。
男と二人きりになり、亨は気まづくて意味もなく利用者名簿を眺めた。
このまま隙をついて帰ってしまいたいが1度捕まった以上、西田に鬼のように電話を掛けられても五月蝿いので大人しく待っているしかない。
「あ、あの。ジャージは受け取って貰えましたか?その·····戻ったらいなかったので。」
「あぁ。受け取ったよ。」
「有難うございました。」
「いいえ。」
男の様子は何処か落ち着きがなく、背筋を伸ばしているのに顔だけ俯けては赤面していた。
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