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転機
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空の弁当箱を持ちながらゆっくり階段を登り、自教室へ戻る。
正直あの教室には戻りたくないが、鞄を置いてきてしまったし、毎回授業にでないということもできない。
戻ったら授業中でもお構い無しに斜め後ろの座席にいる江藤にからかわれるのだろう。
「塩谷だろ?」
重たい足取りで向かっていると廊下のすれ違いざまの男子生徒からその名前聞こえてきこえてきて思わず振り返り足を止める。
その名前の人物は自分の救世主と呼べる人だ。
初めて幼馴染以外で関わりたいと思えた人。
小学生の時から江藤が自分によくつっかかってくるのは分かってるし、虐められてる自覚もある。
中学までは幼馴染の小町が自分を気にかけてくれていた。
高校になってから小町は女子校に進学し、自分を気にかけるものが居なくなった途端、
野獣が世に放たれてしまっかように、遠慮なく江藤はいじめてくるようになった。
それでも、実家が花屋で日頃近場に花があったから、辛い時悲しいときお花に話しかけるだけで心が軽くなってた。
どんなに辛い想いをしても花のことを考えたりお世話している時が嫌なことを忘れるくらい夢中になれた。
それなら、自分の好きなものだけを見ていればいい。そう思いながらも1日過ごしていけばこの生活にも終わりが見えるそう信じていた。
次第に完全に慣れると言ったら嘘になるが、必要以上に動じることはなくなっていた。
そんな修行のような毎日の中でいつもの様に江藤に水をかけられ消沈している時、塩谷亨が手を引いてジャージを貸してくれたときは驚いた。
こんな姿を見て手を差し伸べてくれる人など今までいなかったし、
彼の姿は自分にはない華やかさを持っていて、
普段あんまり人と関わりを持とうとしないからか優しくされることに免疫がなく意図も簡単に落ちてしまった。
何度か彼の教室にジャージを持って行ってみたが
見知らぬ生徒のいる中に声を掛けて呼んでもらうことなど出来ずにいた。
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