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膝枕
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亨はクールだとか大人っぽい落ち着いてるから好きとばかり言われてきた。
当然、自分も今まで惰性で付き合ってきたようなものだし心から楽しいと思ったことが1度もないから表情になんて出ない。
彼女が興味あるのはあくまで格好良い彼氏と付き合っている私であって亨自身ではないと分かっていたからだ。
現に、好きな物を聞かれたことなどない。
自分の好きな物じゃなくても彼女の好きなものに黙って付き合っているだけ。
映画もデートで観に行ったりしたことがあるが漫画が原作の恋愛物一択。嫌いではないが特別好きでもない。
昼食を食べ終えても葵に観せたい映画の話しは止まなかった。
この作品は面白いだとか真剣に葵が聞いてくるので気づいたら饒舌になる。
動画で予告などを観せたりして彼の気が引きそうなものを探す。
葵が興味を示したような表情を見せたときは嬉しかった。
「ふぁー。眠くなってきた。」
黙ってスマホの動画を葵と観ていると次第に睡魔が襲ってきて亨は大きな欠伸をした。
葵は真剣に亨のスマホを持ちながら画面から目線を外さずに観ている。
「葵、膝貸して。」
「えっ·····。人に見られたら困ります·····。」
「大丈夫、みんな自分たちに夢中だから誰も見てにこないって。」
亨は葵の有無を聴かずに、右腿を枕にして横になる。女の太腿ではないし、葵は足に限らず全体的に細いから柔らかくはないが寝心地は悪くない。
「あ、亨くんの携帯·····。」
「いいよ、勝手に観てて。」
横目で葵の様子を下から見てみると困惑したかのように周りを見渡しながら落ち着かないようだった。
下を一瞬だけすぐ向いて目が合ったがすぐに逸らされてしまいその姿に妙に可愛くて心がくすぐられ、制服から香る清潔な洗剤の匂いに居心地の良さを感じながらも瞼を閉じた。
葵をいちいち待たせてこれが恋愛かだなんて確かめなくても心の何処かで気づいていた。
この気持ちはただの興味なんかじゃない。
唯今は全部終わらせるまで葵を堂々と好きだと言える身では無いことも·····。
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