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若杉が去ってしばらくしてから膝元の頭が僅かに動き、こそばゆい感覚がして我に返る。
そろそろ予鈴が鳴る頃なので起こそうか迷っていると手元のスマホが鳴り出して、ビクリと一瞬だけ体が跳ねた。
亨のスマホの画面には西田という名前が出いた。
自分に言い聞かせて気持ちは変わらないと思っててもいざ、明らかに繋がりがあるのだと言っているようなものを見せられるとショックを受けている自分がいる。
手元でずっと鳴り続けているバイブ音を立ててなっているスマホの音に気がついたのか亨は眉間に皺を寄せるとゆっくり瞼を開かせた。
「葵。」
手をついて起き上がると目蓋をこすり此方を見てくる。
「おはようございます·····。」
「ごめん。膝気持ちよくて寝ちゃってた。」
「いいえ·····携帯、鳴ってました。お返しします。」
「あぁ、ありがとう。」
葵は未だに眠眼の亨にスマホを差し出すと、亨は受け取り、画面を開いた素振りを見せ、数秒触ったあとにすぐ画面を落とし、スマホをポケットにしまった。
「電話、掛け直さなくて大丈夫ですか?」
「大丈夫。後でかけるから。」
本当は本人に直接聞いた方がいいのは分かっているが聞き出す勇気はなかった。
聞き出したところで落ち込むのは目に見えているし、言いたくないことかもしれない·····。
聴いて怒らせて関係を壊したくはなかった。
予鈴が鳴り、教室へ戻ろうと4階と3階の踊り場でてっきり別れるものだと思っていたが亨が3階の教室までついてくる様子だったのですかさず立ち止まった。
「亨くん、教室に戻ってください。授業が遅れてしまいます。」
「いいよ、教室まで送るよ。」
「ダメです。」
真っ直ぐ教室にを戻るように言ったが、亨は聴き耳を立てずにズカズカと3階の廊下を歩いていく姿を見て葵は慌ててついていく。
教室の前まで来ると立ち止まり、中へと入るように促され、大人しく入る。扉の外から手を振ってくる亨に気恥しさを感じ周りを気にしながらも葵は小さく手を振って席についた。
亨が居なくなったと入れ違いに教科担任が入ってきて授業が始まる。
亨の行動ひとつひとつに嬉しくなって地に足がつかなくなりそうになるくらいふわふわしている。
恋人のようなことが起こりすぎて
これで本当に付き合ってたら·····なんて考えてしまっている自分を振り払う。
「きもっ」
自分が教室にいることも忘れて口元を緩ませていると斜め先の座席で江藤が此方を見ながらそう呟いたのが聴こえる。
その声を聴いた途端に葵は口を結び、俯いた。
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