アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
17
-
藍野先輩は、菫玲先輩の話題になるとあの表情をするということがこの二ヶ月で分かった。
でも、それを本人に言うことは出来ていないし、今後するつもりもない。
藍野先輩が話さないと言うことは、言いたくないのか、言う必要がないと思われているのか、俺には分からないけれど、聞くべきではないと思っている。
まぁ、先輩自身は無自覚かもしれないけど。
食事を受け取り、席に着いて食べ始めた時、
そういえば、言葉を発したのは藍野先輩からだった。
「いつから飛世のこと名前で呼び始めたの?」
「え?えっと、一ヶ月以上前だったと思います…あの、俺が噛んだからです…」
「噛んだ…?」
「"飛世先輩"って、ちょっと言いづらくないですか?それで、噛んでしまって…。そしたら菫玲先輩が、呼びにくいだろうし名前でいいよって」
「そう…確かに、"飛世"っていうのも言いづらい上に"先輩"が付くと余計に言いづらいね」
ふっと笑った顔は自然で、純粋な笑顔に見えた。
それから他愛もない話で盛り上がって、食事も終わり、そろそろ戻ろうという話になった。
「今日はありがとう、また一緒に食べようね」
「はい、ありがとうございます」
部屋の前まで送ってくれた先輩は、ぽんぽんと俺の頭を撫でて笑顔を向けてから、自分の部屋へと戻って行った。
そして自覚し始めていた。
藍野先輩に触れられると、嬉しくて、ドキドキして、
悲しそうなあの顔を見ると、苦しくて。
藍野先輩はとても綺麗に笑う。
ずっとその表情を見ていたい。
出来ることならば、すぐ隣で。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
17 / 148